ビューティー&ヘルス 生理前のPMSが、天気が悪いと悪化するのはなぜ?焦燥感・イライラ感の対処法を医師が伝授

生理前に起きる不調の症状。月経前症候群(PMS)といわれていますが、その症状が天気が悪くなると、より悪化するということはありませんか?

どうしてPMSと天気が関係しているのでしょうか。症状を和らげる方法も知りたいところです。

そこで今回は、産婦人科医で漢方医でもある医師に、PMSの症状が天気に影響をされる理由や症状の対処法をうかがいました。

天気と同じく気持ちもどんよりしてしまいますね。

天候変化で生理前の不調の症状がひどくなる女性は3人に1人

ツムラが実施したPMSに関する実態調査では、生理前に不調が生じる女性の35.1%、およそ3人に1人が、台風の低気圧などの「天候変化」で症状がひどくなると自覚しており、特にPMSが重い女性は、44.5%にも上りました。

出典:PMSに関する実態調査(ツムラ調べ)

またPMSの症状を尋ねたところ、年代別の結果では、30代と40代はどちらも「焦燥感・イライラ感」がトップになっており、「眠気」や「頭痛」よりも多くなっています。また「不機嫌」も上位で、30~40代は精神的な不調に多くの人が悩まされていることがわかります。

出典:PMSに関する実態調査(ツムラ調べ)

天候の変化でPMSの症状が悪化する原因は「水毒」かも

この調査結果について、産婦人科医で、産婦人科・漢方内科ののぞみ女性クリニック院長である内山心美先生は、次のように解説しています。

「この調査では、天候の変化でPMSの症状がひどくなる女性が3人に1人もいることがわかりました。気圧の変化により片頭痛が誘発されたり、雨続きにより『水毒(すいどく)』の状況となり、PMSの症状が悪化する可能性が考えられます。

水毒とは漢方医学的な考えで、体内の水分代謝が悪くなり、体のいろいろな部位にとどまったり、偏在することで、むくみ、倦怠感、拍動性頭痛、頭重感、立ちくらみ、悪心嘔吐(おうと)などさまざまな症状を引き起こす状態です」

そこで内山先生に、水毒のセルフケア方法を教えていただきました。

1.胃をいたわる

「漢方では、身体をめぐる要素を『気(き)・血(けつ)・水(すい)』と呼び、これら3つの要素が体内をうまくめぐることによって健康が維持されていると考えます。

水毒の状態は、水の循環が滞っている状態ですので、バランスが崩れているといえます。
気・血・水のバランスを整えるには、胃腸を整えることが肝心です。

胃腸が正常に働かないと、消化吸収による気が減ることで、水も気も滞り、『気虚(ききょ)』という、いわゆるエネルギー不足の状態に陥り、無気力や疲労感、だるさ、日中の眠気、食欲不振などが起きてきます。

また胃弱だと栄養が摂りこまれず、『血』や『水』も良い状態にすることができません。代謝も滞るため、水毒の原因となります。

胃をいたわるために、冷たい飲み物は控え、温かいものを摂るよう心がけましょう。また胃の不調とストレスは関係が深いので、ストレスフルな生活にならないようにすることも大切です」

2.冷えを改善する

「水毒は、身体が冷えている『寒(かん)』の状態にあります。寒を改善するには、身体が冷えないようにすることが必要です。

衣類や室内の温度に気をつけるほか、食事も温かいものを摂りましょう。夏場はクーラーの使い過ぎに注意が必要です」

3.運動不足による筋力低下を予防する

「運動不足によって筋肉量が減ってしまうと、脂肪が多くなり、水分代謝機能が低下することで、むくみにつながります。また身体の循環不全となり、冷えの原因にもなります。

予防するには運動を心がけましょう。自分が心地いい、楽しいと感じる強度や頻度で行うこと。無理に頑張ることはおすすめしません。運動しなくてはという義務感は、かえってストレスになるからです。普段まったく運動しない方なら、電車通勤の際に一駅手前で降りて、一駅分、歩く程度でいいでしょう」

30代に多いPMS症状のセルフケア方法

自分に合ったセルフケアを

先ほどのアンケート調査結果において、30~40代に多いPMSの症状は「焦燥感・イライラ感」「不機嫌」「眠気」「倦怠感」でした。そこで、内山先生に、それぞれの症状のセルフケア方法を教えていただきました。

1.焦燥感・イライラ感と不機嫌

ストレスを発散する

「ストレスがたまっていることも原因となりますので、ストレスを発散できる方法をとりましょう。例えば、趣味など、自分に合う楽しく取り組めることに没頭することや、カラオケやスポーツ観戦など、思う存分、大声を出したり、体動かしたりすることのほか、時には誰かに愚痴を言ったり、弱音を吐いたりすることも大切です。オンラインなどを駆使して極力、人と話すようにすることもストレス解消につながるでしょう。
ただし、コロナ渦ですので、いずれも十分に感染対策を考慮した上で行ってください」

軽い運動を行う

「先ほどもご紹介したように、軽い運動を行うことも焦燥感やイライラ、不機嫌対策になります」

一人になる時間を持つ

「ときには、周囲を気にしない時間を持つことも大切です。一人になる時間をあえて作るも良いでしょう。SNS断ちも有効です」

2.止まらない眠気

「睡眠を見直しましょう。理想の睡眠時間は人それぞれです。心地よく起きられて活動的になれる睡眠時間を確保するようにしましょう」

3.倦怠感

「強い倦怠感により、朝起きられなかったり、夜眠れないなどの不眠などをと伴うと、抑うつの可能性もあります。抑うつ感が強いようなら、診療を受け、抗うつ薬を処方してもらうのも一つの方法です。
また倦怠感は、鉄欠乏性貧血、甲状腺機能異常による症状である可能性もあります。
月経前や排卵期に特に症状があるなら、排卵周期によるホルモンの変動が大きく関与することから、診療を受けた際には排卵を抑制する低用量ピルが選択されることもあります」

そして内山先生は、症状が気になる場合、次のことが重要だと話します。

「PMSの場合は、病態を周囲の人に理解してもらえない状態のことが多いです。できるだけ、家族や職場などには、PMSにより不安定な状況にあることを理解してもらい、協力してもらうことが重要です。まず自身がPMSの病態について、よく理解すること。そして自分だけで我慢せず、周囲と不調や悩みを共有しましょう」

つらいときは我慢しないで医師に相談を

内山先生は、セルフケアでは改善せず、つらいときには、医師に相談することを勧めます。

「PMSの症状でつらいときは医師に相談しましょう。日本には、『月経に関するトラブルは我慢するもの』と考えてしまう風潮が少なくありません。PMSによるイライラや焦燥感が強くなると、家族や職場の人間関係にも摩擦が生じ、場合によっては、退職や離別につながる恐れもあります。早めに婦人科などのお医者さんを受診することもおすすめします」

内山先生の病院では、どんな治療を行うのでしょうか。

「当院でも季節の変わり目、低気圧に伴う不調、特に頭痛、めまい、嘔気(吐き気)を訴える方がよくいらっしゃいます。その場合、『気・血・水』のバランスが崩れている状態を緩和することが期待できる漢方薬を処方します」

病院を受診する場合、どのタイミングが良いのでしょうか。

「受診するタイミングは、PMSの症状が出ている間に限らず、いつでも大丈夫です。月経とそのときの症状を記録した『症状日記』をつけて持参いただくと、よりスムーズです。診察内容は問診が基本で、必要に応じ、経腟超音波断層法などの内診をする場合もあるので、月経中は避けたほうが無難かもしれません。内診に抵抗がある場合など、不安があれば医師やスタッフにご相談ください。
問診では、『症状日記』から月経周期との関係性を確認し、疾患への理解を深める『生活指導』や、漢方薬やピルなどを処方する『薬物療法』が行われます。また、自分だけで悩まず、PMSについて家族に対し理解を求めサポートしてもらうよう、アドバイスも行いますので、医師に相談してみるという選択肢をとってみることをおすすめします」

PMSの症状に悩んでおり、特に天候の変化により、悪化するという場合には、今回紹介されたセルフケア方法を試しましょう。もし、それでもつらいなら、病院を受診してみるのをおすすめします。

【取材協力】

内山 心美先生

(うちやま・のぞみ) 「のぞみ女性クリニック」院長 産婦人科医。昭和大学産婦人科学教室、各関連病院勤務、北里大学東洋医学研究所漢方研修生、昭和大学江東豊洲病院助教などを経て現職。「予防医学」「未病」の考えのもと、女性に関するさまざまな病気、トラブルを最小限にして笑顔で過ごしていただくことを願い、2020年9月に産婦人科、漢方内科の「のぞみ女性クリニック」を開業。日本産科婦人科学会 専門医 指導医、日本東洋医学会 漢方専門医、日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医、女性ヘルスケアアドバイザー。

のぞみ女性クリニック
https://www.nozomi-lc.com

調査資料出典:ツムラ
「PMS(月経前症候群)実態調査」
https://www.tsumura.co.jp/news/pdf/20210928.pdf

取材・文/一ノ瀬聡子