ビューティー&ヘルス 「アルコール消毒液が乾きにくいと効果が薄い」は間違い!コロナ禍の勘違いを感染制御専門家が解説

コロナの感染対策として 外出時には特に、店舗入り口などにあるアルコール消毒液の使用や、オフィスのエレベーターや手すりに触れるときには気を付けるなど、普段何気なく行っている対策が、実は不十分なのでは…?と自分でも不安になってしまうこと、ありますよね。自分ではしっかり感染対策をしているつもりでも、実際は手薄になっている、もしくは間違った対策を実施しているかもしれません。

そこで今回は、ダスキンが実施した「コロナ環境下での衛生意識・衛生管理行動実態調査」の結果を元に、一般の人々の感染予防行動を踏まえて、感染制御の専門家・東京医療保健大学 菅原えりさ教授が解説していた正しい方法をご紹介します。さらに、菅原教授に感染対策の素朴な疑問をうかがいました。

日頃の感染対策の正解・不正解を、今一度確認しておきましょう。

この感染対策の行動は正しい?間違っている?を調査

ダスキンが20代~60代の男女1,000人を対象にコロナ禍での衛生意識・衛生管理行動に関する実態調査を行い、コロナ禍での衛生管理行動について、「正しい」「間違っている」「わからない」の3択で答えてもらいました。

「わからない」という回答が多かったもののTOP3は、
・1位「アルコールなどを使って手すりやドアノブを消毒する際は、直接スプレーするのが効果的」(48.1%)
・2位「エレベーターのボタンは指の第二関節で押すとコロナ感染予防に良い」(44.1%)
・3位「手洗いをした後は、アルコール消毒をしなければならない」(39.3%)
でした。

コロナ環境下での衛生意識・衛生管理行動実態調査

日頃の感染対策、なぜ間違い?

ドアノブに直接スプレーだけでは不十分

そこで、先のTOP3の感染対策になりそうな行動について、なぜ間違いなのか、菅原教授の解説をご紹介します。

1.「アルコールなどを使って手すりやドアノブを消毒する際は、直接スプレーするのが効果的」は間違い

「一見、正しそうに見えますが、有効だとはいえません。もちろん、手で頻繁に触れるところ(高頻度接触環境表面(High-touch surfaces,HTS))をアルコールで消毒すること自体は大切です。

しかし、シュッとスプレーしただけではムラができてしまいます。スプレーしたあと、清潔な布などできちんとふき取るようにしてください」

2.「エレベーターのボタンは、指の第二関節で押すとコロナ感染予防に良い」は間違い

「私たちは、手のひら側を最も清潔に保ちたいという心理が働きます。よって、エレベーターのボタンなど不特定多数が触れる箇所を手のひら側で直接触れたくないと考えるのでしょう。

もちろん手の甲側(第二関節)を使用すれば一時的に手のひら側の接触を避けることになりますが、その手(手の甲側)が顔などに触れることはあり得ます。

つまり、人間のさまざまな行動を考えると、手のどの部分も外界と接触しやすく、手の甲側といっても油断はできません。第二関節でエレベーターのボタンを押しても、その後の手洗いや消毒は忘れないようにしてください」

3.「手洗いをした後は、アルコール消毒をしなければならない」は必須ではない

「間違いではありませんが、必須ではありません。病気を引き起こす微生物の中には、手洗いした上でアルコール消毒をしたほうが効果的なものもありますが、新型コロナウイルスは、60%以上のアルコールはもちろん、石けんの成分である界面活性剤で不活化、つまり死滅することも示されていますので、どちらかひとつで大丈夫である、ということです」

日ごろの感染対策への素朴な疑問に、教授がお答えします

その他、日頃、感染対策を行いながらも疑問に感じる事柄について、菅原教授に尋ねてみました。

「アルコールをふきかけた後はよく擦り込む」が正解

―電車のつり革など、ウイルスがついていそうな場所に触った後、アルコール消毒スプレーで手をシュッとしたときに、手をこすり合わせるのは意味があるのでしょうか。

「アルコールをふきかけるだけでは、アルコールの行き届いくところと行き届かないところが出てきます。つまり、まばらになりますので、必ず手全体にアルコールが行き届くようよく擦り込んでください」

「乾きやすいアルコール消毒液は効果が薄い」は勘違い

―「アルコールは揮発性が高い」ことから、手につけたときになかなか乾きにくいタイプのアルコール消毒液は、アルコールの濃度が低いように感じますが、不安なときはすぐ乾くタイプを重ねてつけたほうがいいですか?

「アルコール濃度と粘度は関係ありません。よって、その上に改めてアルコールをふきかける必要はありません。

市販されている製剤によって、粘度の差はあるようですが、いつまでも乾かないからといって、ふき取ったり、量を加減したりしないでください。あくまでも十分な量を手に取り、乾くまで擦り込むことが原則です」

沫感染防止のためのアクリル板設置箇所は換気が重要

―飛沫感染防止のために、オフィスの執務エリアや受付などに設置されているアクリル板は、空気が停滞しそうですが、どうでしょうか。

「そもそもアクリル板は、相手の飛沫を直接受けないためのもので、オフィスの執務エリアや受付では互いにマスクを着用している場面ですから、過剰な対策かもしれません。もちろん、不特定多数の方と対応しなければならない場合は念のためアクリル板を設置することはあってもいいと思います。

ただ、物理的な遮蔽物を設置するということですので、その部分の空気の流れが変化することはあるでしょう。ここで重要なのは『換気』です。部屋の内部の空気の入れ替えは定期的に行うようにしましょう」

新型コロナウイルスが食品についている場合も加熱すれば問題ない

―食品に新型コロナウイルスが付いていた場合、電子レンジで加熱すれば安心して食べられるそうですが、本当ですか?

「新型コロナウイルスは熱に弱いウイルスです。万が一、ウイルスが食品そのものに付着していても、熱によって死滅します。また、新型コロナウイルスは食品によって伝播しませんので、それほど神経質になる必要はありません」

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第6波を迎えている今、誰もがいつどこで感染するかわからない状況となっています。今一度、感染対策を見直したいですね。

【取材協力】

菅原えりさ(すがわら・えりさ)先生

東京医療保健大学大学院感染制御学教授。東京都iCDC感染制御チームメンバー。
1995年より日本赤十字社医療センター勤務。2012年東京医療保健大学大学院感染制御学博士後期課程修了。2016年より同大学大学院感染制御学教授(現職)。日本環境感染学会評議員、2013年より厚生労働省厚生科学審議会感染症部会臨時委員、2020年より東京都iCDC感染制御チームメンバー。新型コロナウイルス感染症対策では、ダイアモンドプリンセス号の船内対応を皮切りに、厚生労働省、学会、都などからの要請に継続的に取り組んでいる。


調査資料出典
ダスキン「コロナ環境下での衛生意識・衛生管理行動実態調査」
https://www.duskin.co.jp/news/2021/pdf/211216_01.pdf

取材・文/一ノ瀬聡子