こんにちは、公認心理師、精神保健福祉士の水口明子です。コロナ禍が続き、以前から自身のことを潔癖症だと思っている方以外にも、電車のつり革などが触れられなくなった、必要以上に手を洗ってしまうという方が増えてきていると思います。以前「接触恐怖症」という「強迫性障害」の中の一種である疾患をご紹介しましたが、この強迫性障害は潔癖症というだけではなく、戸締りやスイッチ、コンセントなどを何度も確認してしまう、物の位置や置き方に異常にこだわりがあるなどの確認行為、強迫行為もあります。今回は「強迫性障害」についてお話させていただきます。
強迫性障害は日常の延長線上にある
「強迫性障害」は、不安障害という神経症の中のひとつです。不安・恐怖の異常な高まりによって必要以上に行動を起こしてしまい、それが生活にも支障をきたすレベルになってしまうという病です。
皆さんの中にも、「家の戸締りをちゃんとしたかな?」「エアコンを消し忘れたかも」と、不安になって家に戻ってしまったという経験をしたことはないでしょうか。この行動も不安にかられての行動です。もちろん、この行動が強迫性障害ということではなく、この行動を日常に支障をきたすほど繰り返す、また長時間をかけてしまうことが病かどうかの判断基準となります。家の戸締りであれば、遅刻してしまうとわかっているのに何度もカギをかけたかどうかを確認する行為が該当します。
他にも、日本人はラッキーナンバーやゲン担ぎなど、こだわりを持つこともよくあるでしょう。しかし、この行為も生活が不便になってしまうほどであれば強迫性障害が疑われます。
コロナ禍においては、手にウイルスがついているんじゃないかと1時間以上も手を洗い続けてしまったり、肌荒れしているのにも関わらずアルコール消毒を家で何かに触れる度に何度も過剰にしてしまうなどの行為が当たります。
いまだ発症理由がわかっていない
強迫性障害には、「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状があります。説明は下記の通りです。
強迫観念……頭からあることが離れなくなり、その不安、恐怖、不快感に苛まれてしまう。過度の確認などの強迫行為を引き起こす
強迫行為……強迫観念による不安や恐怖、不快感を一時的に軽くするための行為
強迫性障害は、日常への不便さを自分自身も感じており、自覚がある場合がほとんどです。自分でも行き過ぎた行動でありながら止めることができないのです。しかし、日常に不便だと思いながらも病院に行かない人も多く、どのくらいの割合で強迫性障害の患者がいるのかは明らかになっていません。
発症には性格、生育歴、ストレスなど、さまざまな要因との関係が考えられているものの、強迫性障害になる原因はいまだはっきりとはわかっていません。
