女性はターミナル駅付近の、タワーマンションに帰っていきました。軽く酔っていた様子で、バッグを探してもカギが見当たりません。エントランスのパネルに部屋番号を入れてピンポンすると、モニターには高校生くらいの男の子が映し出されていました。
「ママよ、あけて」と言っていたので、おそらくこの女性の息子なのでしょう。
すぐに依頼者・香苗さんに報告すると、「今、夫から来週末に社員旅行があると連絡が入りました。この調査にも行ってください。報告は、まとめてお願いします」とおっしゃっていました。
そこで翌週の週末に調査をしたところ、社員旅行と言うのは嘘で、彼女と熱海に一泊旅行していました。これは後でわかったことですが、高校生の息子さんはこの時、サッカー部の合宿に行っていたそうです。
報告の日、依頼者・香苗さんはどこか達観した表情で、「やはりそうでしたか」とおっしゃっていました。
「さもありなんというか、筑前煮は夫の実母の思い出のメニューだそうで、何度も作ってくれと言われたのですが断っていました。まさかこんなことになるなんて。でも、この女性の料理は雑ですね。まずそう」
さんざん、女性の悪口を言っていた香苗さん。調査をして本当に良かったと言ってくださいました。
「この女性とは結婚しないでしょうけれど、いざとなれば有利に離婚もできます。なにより事実が分かったことで、すっきりしました。その理由は、彼女は夫が10歳のときに亡くなった実母の代替え要員であるとわかったからです。だって、公園で筑前煮っておかしいですよ。真っ赤なマニキュアのケバいおばちゃんの作るものをありがたがって食べるって、ちょっと変な感じがします」
証拠を見たことで、レス問題も仕方ないと受け入れることができたと続けます。
「ホテルから出た彼女の態度は夫とラブラブしていますが、表情はかなりムッとしていますよね。たぶん、夫はできなかったんじゃないかなと思うんです。メンタルをやられたときに、強い薬を飲んでいたので、仕方がないです。それに、持つべき証拠があることで『なんでもこい』と強くなれた気がします」
今回の調査費は30万円です。

女性に胃袋をつかまれる男性は多い。それは、自分の母親と似た料理を作る人に弱い、ということでもある。
※本連載はプライバシーに配慮し、体験内容を変えない程度に一部書き換えています。