コラム 乳がん母さんの明るい共病17|再発からの手術コース、マジで泣きたくなった初めてのICU体験~その2~

ICU体験

ところで、ICUにお泊まりした経験のある人って、この日本で何%くらいいるんでしょうね?

私の経験から言わせていただくと、意識がはっきりしている間は、あまり居心地のいい場所ではないです(←当たり前)。

そうじゃなくてもICUのベッドは狭い。

特に私が入院した病院のICUは、下手に寝返りなんかしたら落ちそうなくらいには狭かったです。まっ、寝返りをうてるほどに元気があるなら、そもそもそんな場所には泊まらないから、ある意味、納得の狭さではあるんですが。

そう!寝返りひとつ打てない!

狭いからというのもあるけれど、なによりも痛いから。

麻酔から覚めた私を襲った強烈な痛みは、手術の傷のそれではありませんでした。そっちは、硬膜外麻酔がしっかり効いているので、無痛といってもいいほどに無事でした。

傷ではなくて、背中!! (私が受けたのは肺の手術とはいっても、切ったのはわきから背中にかけてでした。傷口は左の肩甲骨の下あたりで、10cmくらいです)

激しい肩凝りってあるじゃないですか。吐きけがするくらいの。

そんな肩凝りが鉄板となった背中にべったりと打ち付けられているみたいな!!

痛いというより、つらい!

後日、手術をしてくれた外科医に聞いたら、「結腫をとるために、切ったところから僕の手をいれてグイグイしたからねえ。筋肉も少し寄せたし、その影響でしょう」ということでした。

いやいやいやいやいやいや。あなた!世の皆さんが肩凝りやなにかでお灸だ鍼だといろいろ試しているわけですが、体のなかに手を突っ込んでじかに筋肉をわきに寄せるとか。それってアリなわけ? アロマだ何だとちまちまやっているのが馬鹿らしくなるほどの、みもふたもなさ。むしろシュールに思えるんですけど?

この肩凝りもどきの背中の痛みは、退院してしばらくしても残っていたものでした。

で、ICUに話は戻りますが。痛い、つらい、という状況下で、することもなく、寝返りすら打てず、じっと時間がたつのだけを待つというのはなかなかに辛かったです。

私史上では、初めての出産が最後の最後で緊急帝王切開になってしまい、当然、硬膜外麻酔などもない中で、生んだあとの一晩というのが最も辛かった経験ですが、それを思い出させてくれるだけのインパクトはありました。

1分が1時間に感じる一夜、という点ではほぼ同じでした。しかも、初めての出産のときにあった若さはすでにないし。

看護師さんが気をきかせて枕元にテレビを持ってきてくれたのですが、ちょうどその時は、パリで大きなテロ事件があったばかり。どのチャンネルもその特集ばかり。とてもじゃないけど、そんな映像を受け止めるだけの体力はありませんでしたよ、私。

できれば、毒にも薬にもならない通販番組のほうがありがたかったです。それを伝える体力もなかったんですけども。

今でも思い出すのは、深夜のICUで、ピコピコと規則的な電子音が流れ続ける中、暗めの照明の下で静かに働き続ける医師や看護師さんたちの姿です。

痛くて、つらくて、静かな夜でした。

体感的には一週間ほどにも感じた、長~~い夜を過ごして、病室に帰れるときは嬉しかったです。

しかし、車イスに乗せられて、「病棟の看護師が迎えにくるまでこのまま待っていてくださいね」と言われ、30分以上放置されたのには、けっこう、マジで泣きたくなりました。

いくらなんでも体の中をグリグリ押されると、痛さマックスですよ……。

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プロフィール

石橋真理子

ライター。昭和の時代に千葉県の片田舎に生を受け、日本の経済とともに成長し、バブル景気に文字通り踊った、バブル世代。OLを経験したのち、20代半ばでライターに転身。週刊朝日、女性セブンなどでエッセイを連載した。著書に『瀬戸際のブライダル』(朝日新聞社)他、育児・ワーキングマザー関連の実用書が多数ある。家族は夫と2人の娘、犬(ラブラドール・レトリバー)が1匹。2013年2月に乳ガンの告知を受け、現在も治療中。