コラム BAが見た、女の世界|店選びに場所取り、ボスのご機嫌取り…新人美容部員は食べるのも一苦労!

メチャクチャ体育会系!新人はランチが喉を通らない?

もともと人付き合いが得意な方ではなかった私です。だけど仕事中、誰かと一緒というのは耐えられる。休憩時間にひとりの時間を持てたなら……。

はい、残念ながらそんな時間はありませんでした。当時私が配属された店舗では、他ブランドと協力し合うのが鉄の掟。そのための良好な関係作りのひとつとして、「ランチは合同で!」というものがあったのです。

これについては先輩から、

「ボスから食事の集合がかかったら、“何が食べたい?”って聞かれると思う。でも、絶対に答えちゃダメ!」

と。ちょっと“?”、聞かれるのに答えちゃダメなの?

「どう返事をしたらいいんですか?」

と聞くと、

「〇〇さん(ボス)のオススメのお店に連れて行ってください」

が、正解とのこと。

ちなみにボスとはご想像のとおり、勤続年数が長いベテラン社員のことを指します。だいたい各ブランドにひとりはこのボスがいて、何グループかに分かれるランチにひとりもしくはふたりのボスがいるってわけ。ベテラン社員、大先輩……、それだけでも緊張の対象なのに、彼女たちの機嫌を損ねるとその人が所属するブランドを巻き込んでマルッと嫌われてしまうというのだから気が抜けないじゃないですか。

過去には、

「あら、今日は〇〇さんが出勤なのね。じゃあ、△△(ブランド名)をお客様に紹介するのはやめましょう」

ボスを取り巻くほかのBAも揃って……「そうですね、△△(ブランド名)の人気のアイシャドウ、××(ブランド名)に似たようなものありましたよね? そっちを勧めましょう!」って、怖い、怖すぎます。何なんでしょう、このなぞのチームプレー。

手に汗握るド緊張の初めてのランチは今でも忘れません。事は先輩の言う通りに進んでいき、いざお店に着いたら新人BAが席決めやら水を持ってくるやら、メニューのオーダーをするやら……、業務中よりも気を使うこの空気。早くも逃げ出したいっ!

順不同にそれぞれが注文したメニューがテーブルに届いても、ボスが最初のひと口を食べるまでは手はひざの上状態です。伸びてしまう麺類は美味しく食べられないな、なんて思っていると、

「はい、いただきましょう!」

このボスからの号令は、私たちにとってはある種の競技の始まり。誰よりも先に食べ終え、空いた食器を下げてもらったり、食後のドリンクのオーダーや灰皿の調達をしたりする役割があるので、消化不良を起こす一歩手前って感じ。

会話に参加するのにもルールがあります。

1.聞かない→悪口大会が始まったら、あの子も「一緒に言っていた」と言われないためにも聞こえないふりをする

2.言わない→自分の意見は言わず、ニコニコしながら相槌を打つ

3.見ない→食事中の姿をまじまじ見ない

なんて疲れるランチでしょう。まるで接待。すっかり疲弊して午後の業務に戻ったのを鮮明に覚えています。

あの頃の私は食が細く、食材の好き嫌いもあって。合同ランチは本当にツラかったー。どうしても食べられず、残してしまったある日。

「あら、高木さん、半分も食べてないじゃない! あー、私たちと一緒だから美味しく食べられないのかしら?」 「タバコも煙たかったわよねー、あっちの席に移ってもいいのよ?」

とか言われちゃうんだから。しかも、口もとは笑っているけれど、目は笑っていない顔で。胃薬を飲むのを覚悟で、残りを一気にかき込みましたよ。 BAが集ってランチをしている姿って、なんだかきらびやかに見えますよね。だけど、もしかしたらそのうちの何人かは気が気ではない時間を過ごしているかもしれません。

ボスのご機嫌を損ねてはいけないのです……。 イラスト/なぎた

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プロフィール

ライター/ヨガインストラクター高木沙織

「美」と「健康」には密接な関係があるため、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。野菜や果物、雑穀に関する資格を複数所有。”スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ヨガでは骨盤ヨガや産前・産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスでボディーメイクをサポート。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。近年はエッセイの執筆にも力を入れている。