コラム BAが見た、女の世界|孤立した末に地下倉庫が安息の場に、華やかさとは真逆の暗闇に潜むものは…?

ライターの高木沙織です。

「BA(ビューティーアドバイザー)が見た、女の世界」、3話めの今回は入社早々孤立してしまった私の唯一の楽しみについてお話ししていきましょう。 

それはヒンヤリと冷たく、それでいてじっとりとした重い空気が流れる薄暗い地下倉庫での……。あ、晩夏の怪談話しではありませんのでご安心を。いや、ほんのちょっと……?

「ひとりになりたい」が別の意味で叶う

BAが働く場所と言ったらコスメ売り場ですよね。大切な商品であるコスメやそれを使ってメイクをした顔が映えるように明るくキラキラとした(結構なまぶしさの)照明のもと、にこやかに接客をしている姿が思い浮かぶのではないでしょうか。

私もそんな場所にいたことにはいたのですが、英語が話せることで周囲から頼られ得意げになり、その挙句お世話になった先輩BAに上から目線の生意気なアドバイスなんてしてしまったものだから(※ 第2話参照)、入社早々コスメ売り場で浮いてしまったんですね。

もともと人付き合いが得意な方ではなかったうえに、ここは女の園。上手くやっていくためのコミュニケーションスキルを身に付けることは当時の私にとって試験勉強よりも難しく、克服しがたい課題だったのです。それが一旦崩れてしまった関係の修復だなんてハイレベル過ぎて……、ただただオドオドと周りの目を気にして自信なさげに接客をする日々を送るのでした。

「あ、英語の接客お願いしたいんだけど、高木さん忙しそうだからいいわー」

「すぐに伺います!」

「ううん、ほかの社員さんに頼むから」

(いや、私全然忙しくないですよ)

とか……

「なんか体調悪そうね、お昼は別に出てもいいわよ」

「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です、ぜひご一緒させてください」

「うーん、今日は中華だからもたれちゃうわよ、また今度ね」

(いや、むしろ体調は絶好調です)

とか、少しずつみんなとの溝が深まっていって、入社当時はあれほど(ひとりになりたい!)と思っていた願望が違った形で実現したのでした。

地下倉庫での作業が一番好きだ!

そんな孤立状態の私を心配したのは、同ブランドの直属の上司。

「ねぇ、ツラいことない?」

と、よく気遣ってくれ、食事休憩も他社のみんなと一緒に出なくてはならないというルールがあるのにも関わらずひとりぼっちの私と過ごしてくれる頼れるボスでした。怒ると激コワだけど、人情と男気が溢れるボスというのが彼女を形容するのにピッタリ。

そんなボスからある日、新たな業務を任されます。それは、発注した商品を地下にある倉庫へ持っていき収納・片付けをする作業。各ブランドからひとりずつ、時間を決めて倉庫へ下りるため、基本的にはひとりでの時間を過ごすことができるのです。

「ちょっとした息抜きにもなるし、商品名もよく覚えられるから」

ボスの優しさに、弱っていた心が救われるよう。

もうね、私この時間が大好きになっちゃいました。周りのBAたちの会話や動向を気にすることなく堂々とひとりでいられるし、発注した商品というのはそもそも売れ筋の商品ということだから……

「へー、今はこれが人気なんだ」

と、その商品のテスターを用意したり、色味を試してみたり、それで気に入ったら社販で割引価格で購入できる(金額や個数に制限アリ)ため次回の申請時の参考にしたりして。大好きなコスメ・スキンケアに囲まれて過ごす1時間ばかりのこの時間は、充実そのもの。

「誰にも気兼ねすることがないひとり、最高!しかもここ、まぶしくないし涼しいし、静かだし」

なんて具合に、倉庫時間をすっかり満喫していたのはあの噂話を耳にするまでのこと……。

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