ライターの高木沙織です。
欲しい物を欲しい!と言えるって、ステキなことだと思いませんか? 「それ、ください」って、ちょっと勇気を出さないと言えない言葉だと思うから。
ちなみに20代前半の私は“欲しがる”ことが恥ずかしかった。そのせいで、後悔することがたくさんありました。
今回は、BA(ビューティーアドバイザー)時代のそんな出来事をお話ししていきたいと思います。
大好物、来た!……でも一番乗りは気まずい
旅行や出張のお土産をもらうと気分が高揚しますよね。お土産を買ってきてくれた、というその気持ちがまず嬉しい!
そして、初めて目にするご当地銘菓の数々。「こんなお菓子があるんだ」「これって、こんな味があるの?」と心がときめいてしまいます。
今でこそ各地の名産品を購入できるアンテナショップがそこかしこにあるし、オンラインショップもあるけれど、北は北海道、南は沖縄、当時はその土地に出向かないとなかなか手に入れることができませんでした。
なかでも私が大好きなのは『博多通りもん』。
バターの香りがする福岡・博多名物の白餡のお饅頭です。福岡出張から帰ってきた知人に手渡されると、そのもったりとしたクリーミーな甘さにお饅頭の概念を覆され、ひと口で心を奪われました。それからも『博多通りもん』が食べたいがために「Aさん、また福岡に出張しないかな」と密かに願っていたのは、ココだけの話しです。それくらい好きなんです。
ある出勤日の話。
お昼休憩から戻り、コスメ売り場のバックヤードにあるパソコンを使って売上管理をしていると、免税店の男性社員が出張から戻ってきたと話している声が聞こえてきました。行き先は福岡……。
男性社員「これ、お土産です。置いておくのでみなさんでどうぞ」
(もしかして、アレじゃない?)
期待というよりはもう確信をもってうしろを振り返ると、そこにはあのクリーム色の箱が! しかも、2箱もあるではないですか。
(欲しい! でも真っ先にいただきます、は新人なのに図々しいよね……)
そこで思いついたのが、誰かが手に取ったらどさくさに紛れていただこう作戦です。それまでは「欲しがっています」というオーラを出さないように、それでいて意識は『博多通りもん』に向けて作業を続けます。
どんどん減っていくのにまだ「ください」が言えない
そこに、小休憩やちょっとした談笑のために免税店のほかの社員や他ブランドのBAたちがやってきます。
お土産は、ウォーターサーバーの近くにあるテーブルの上。休憩時間にどうぞ、と言わんばかりの目立つ場所に置かれています。
他ブランドのBA「あ、お土産だ!これ美味しいんだよね、いただきます」
と、食べ終えて売店に戻っていくと、お土産の話しを聞いたのかまた別のBAが入れ替わり立ち代わり……。次から次へと減っていく『博多通りもん』。
なかには、着席してお茶を飲みながら食べていく人も。1箱空いたようで、それを潰して捨てる気配を背後に感じる頃には、早くもらいにいかなくてはと焦り始めます。
さっさともらいにいけばいいじゃん?
ですよね、私もそう思うんですが……。何せ好まれている存在ではなかった私、積極的にいけなかったんです。
(あの子ももらうんだ)
(へぇー、こういうときだけ)
(そもそもあなたの分、ないし)
もう、頭の中はこんなネガティヴな思考がグルグルとまわりにまわって。
さらには「ください」と主張するひと言が妙に恥ずかしくて。何なんでしょうね、あの頃は出る杭は打たれるから(実際に打たれてるし)、自分の希望や意思は表に出さずに秘めておくもの、みたいに考えていたように、うっすら記憶しています。特に、食べ物に関しては“食い意地が張ってる”と思われたくなかったのでしょう。20代前半ってそういうお年頃。
人から意見を求められても「何でもいいよ」とか、「どっちでもいいよ」とか、そんな答え方ばかりするようになり、気が付くとひとりになっていました……。
そうこう考え事をしている間にも、バックヤードから売り場に戻る時間です。タイムアウト!