コラム BAが見た、女の世界|ダサめキャンペーン服をめぐって女同士のプチバトル勃発

ライターの高木沙織です。

「顔がアンパンマン!」
これ、太ったときによく言われます。というのも私、太るとまず顔。それから腕まわり、胸を抜かして(ここ、何でなの!)お腹という順番でぷっくりしてくるんです。

女性の場合、ホルモンバランスや代謝の関係で下半身から太っていくと言われていますが、私はいつも上半身から。なので、“アンパンマン注意報”の発令によって、食生活やら生活習慣やらを改めなくてはと焦りはじめるワケです。

だから、淡い色のトップスだなんて、よほど調子がいいときでなければ着たくないのに……。

キャンペーン期間中の制服「か、かわいい……ですね」

BA(ビューティーアドバイザー)時代、制服は黒のパンツスーツでした。

インナーのカットソーも黒で、それがまたいい生地だったんでしょう。洗濯やクリーニングを繰り返しても、よれたりたるんだりすることなくいつでもいい状態で、しっくりと体に馴染んでスタイルをよく見せてくれる! スタイリッシュ!

(さすが、ブランド物は違うよね)

Tシャツとダメージデニムばかり着ていた20代前半の私にとって、仕事でもなければ袖をとおすことがないであろうハイブランドの制服はちょっとした自慢でした。

それが、ある終業後のロッカールームで……。

チーフ:「明日から○○(某香水)のキャンペーンがはじまるから、これ着てね!」

と、ピンク色のカットソーを手渡されたのでした。

私:「あ、か、かわいい……ですね」

ピンクはピンクでも濃いめのピンクとか、サーモンピンクとかあるじゃないですか。それならかろうじてイケたと思うんです。けれども、手元にあるのはなんともかわいらしいパステルピンクのカットソー。着る前からもう……。

(これ、絶対にダメなやつ)

嫌な予感しかしません。

予感は的中、ピンクのカットソー着たくない

手渡されたピンクのカットソー。

チーフが帰ったあともしばらくじっと見つめ、それから意を決して鏡の前であててみました。

(うーん、やっぱりしっくりこない)

実際に着てみます。

(ブフッ! 待って、これダメ。ヤバい!)

吹き出しました。

私、ピンクが破滅的に似合わないんですよ。パステルピンクなんて特に。顔立ちなのか、パーソナルカラー的な問題なのか、とにかく普段から絶対に選ぶことがないのがピンク。

しかもこのときの私……、ちょっと太っていたから二重の悲劇。

明日からこのカットソーと言われても、急に似合うような顔立ちになるわけでもなければ、一日で痩せるわけもないし。こんな姿見られたくない、と誰もいないロッカールームで頭を抱えたのでした。

ピンクのカットソー、着たくないのはみんな同じだった!?

嫌だな、と思ってもその日はやってきます。

朝、ロッカールームで改めて袖をとおしてみても、前日に思ったとおり一日でなにかが変わるわけもなく。本当に似合わなくて、目も当てられないありさまです。

(顔がパンパンなのが目立つような……。っていうか、上半身が余計に大きく見えるよね。変だわー)

おそらくは、このキャンペーンのためだけに急いで用意したものなのでしょう。ピンクのカットソーはブランド物ではなく、生地もデザインもちょっと微妙だったんです。

……なんか、上半身が膨張した大きな桃みたい(胸は除く)。そんな不思議な現象が起こったのでした。

でもでも、私にはジャケットという強い味方があるではないですか! ジャケットを着てしまえば、ピンクの大部分が隠れます。いつもはボタンを開けて着ていましたが、この日はしっかりと締めていざ売り場へ。

すると……。

チーフ:「あー、高木さん。ジャケットはダメよ! 脱いで!」
と、あとからやってきたチーフのひと言に頼みの綱も切れ果てて。

他ブランドのBA:「すっごいピンクだね、みんな!」
他ブランドのBA:「か、かわいいよ!」

このピンクのカットソーは相当レベルが高かったのか、ほかの同僚BAたちもちょっと微妙。

そして問題は、店頭に立ってのムエット配り(香水をシュッと吹きかけた紙を配ること)で、行き交うお客様はピンクの私たちをギョッとした表情で二度見していくのでした。

さらには、店の前を通過して出発ゲートへと向かうヨーロッパ系航空会社のパイロット(たまに見かける超イケメン)に、「わーお!」みたいなことを言われたときは、顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。

慌ててコスメカウンターに引っ込もうとしたのだけれど、そこからは先輩たちの“まだ戻ってくるな”という無言の圧力が……。

それからというもの、このムエット配りは押し付け合い。女のプチバトルのはじまり、はじまり。

A先輩:「私さあ、このピンクだと太って見えない? Bちゃんがムエット配ったほうがお客様も喜んでもらってくれると思うんだよね?」

(はい、そんなこと思ってないでしょう?)

B先輩:「いやいや、多分このピンクが一番似合うのは高木さんだから! 高木さん、よろしくね」

(絶対に嘘!)

私:「え……、私おかしいくらい似合ってませんよね? 先輩、顔が笑ってるし。じゃんけんで決めましょう!」
A先輩・B先輩「ごめーん、ここは先輩に免じて勘弁して!」

キャンペーン期間は二週間。こんなやり取りが毎日のように繰り広げられたのでした。

そして、何度着ても似合わないものは似合わない。メイクを工夫してみても、少し痩せてみても似合わない。トイレの鏡に映るピンクの自分が嫌で、伏し目がちに手を洗ってササッと立ち去る日々。

キャンペーンが終わり、いつもの制服に戻ったときの嬉しさといったら。

(黒、最高!)

こう喜んだのも束の間、その数日後にはチーフからグリーンのカットソーが手渡されます。

チーフ:「明日からね!」
私:「なにかの罰ゲームじゃないですよね、このグリーン……」

それもまた某香水のキャンペーン用の制服だったのですが、カマキリのようなグリーン、もといキミドリ色だったんです。

これはネタではなくて、本当にあった話。高校時代にいいなと思っていた憧れの相手から「沙織ちゃんって、カマキリに似てるよね」と言われたことがあるんです。

そんな私でも着こなすことができなかったグリーンのカットソー。

ストレスで暴飲暴食に走ったら体がサイズアップして、太ったカマキリに変身。

そんな私をかわいそうだと思ってくれたのかは定かではありませんが、ムエット配りは公平に。時間をしっかり決めて、みんなでまわすようになったのでした。

これはもう上半身が太りやすいからどうのこうの、という問題ではなくて、制服が微妙だったというアレですね。今もパステルカラーのトップスに手を伸ばさないのは、大きな桃と太ったカマキリを思い出すからかもしれません。

ピーチ姫……にはなれなかった模様! イラスト by Kato

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プロフィール

ライター/ヨガインストラクター高木沙織

「美」と「健康」には密接な関係があるため、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。野菜や果物、雑穀に関する資格を複数所有。”スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ヨガでは骨盤ヨガや産前・産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスでボディーメイクをサポート。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。近年はエッセイの執筆にも力を入れている。