コラム BAが見た、女の世界|その悪口、私のことですよね…?自分の心を守る方法

ライターの高木沙織です。

「明日への扉」「未来への扉」。“扉”という単語の前には、どこかこうポジティブなイメージを連想させる別の単語がセットになっていると思いませんか?

それはまるで、希望への入り口だったり、新しいものを切り開いて突き進んで行ったりするような。あ、でも怪談話には、「開かずの扉」なんていうちょっと怖い扉もあるか。

ちなみに、若かりし頃、BA(ビューティーアドバイザー)として働いていた私には、開けてはいけない、もとい開けたくない扉がありました。

だけど、出勤日には避けて通れない。それも、終業後なんて地獄への扉だといっても過言ではなかった。

だって、その扉の先ではこんな光景が繰り広げられていたのだから……。

終業後のロッカールームで新人BAが戦慄したこととは?

さて、これまでランキング形式でお話してきた、「終業後のロッカールームで起こっていた恐ろしいこと」をおさらいしていきましょう。

まず第3位は、“パンプス&ストッキング脱ぎ散らかし”。ニオイ問題がなかなかのものでしたねえ。続く第2位は、“着替え中の下着チェック”。先輩方の、タカかワシ並みの動体視力の良さには驚かされたものです。

そして、栄えある(栄えなくてOK)第1位はというと……。

“悪口が聞こえてくる”です。

あ、やっぱり? 正解した方も多いのではないでしょうか。

これって、職種や性別、年齢など関係なしに人が集まると致し方ないことなのかなあと思うのですが、BA時代はひときわ戦慄させられたものです。

業務中って、みんなそれぞれに“アレコレ”を飲み込んでやり過ごすことも多いでしょう? その反動というか、職場から離れた場所にあるロッカールームに戻ってきたときの解放感といったら! そこは、まるで無法地帯。さまざまな悪口が聞こえてくるのです……。

ほかの人のことだけではなく、自分の悪口も聞こえてくる恐怖

悪口って、“陰口”であることが多いじゃないですか。

本人がいないところで囁かれる、ってやつです。それゆえ、その場にいないシフトが異なる誰かの悪口が耳に入ってくるなんていうのは、終業後のロッカールームではよくあること。

きっと、自分も同じようにターゲットになっている日があるんだろうな、とある種の開き直りを覚えて、その輪に参加しないようにしていたのですが……。

BA時代に使っていた広~いロッカールームでは、うっかりでは済まされない悲しい出来事が起こってしまうこともしばしば。

これは、ある日の終業後。ロッカールームへと入って行ったとき。

私:「お疲れさまでしたー!」

すると、室内がシーン……。

さっきまで、ザワザワと人が集まって話す声がしていたのに、蜘蛛の子を散らすかのようにみんな散り散りに。

(あ、何か変な空気……)

うん、察しますよね。

さらには、近くのロッカーを使っていた他ブランドのBAとふと目が合うと、慌てた様子でパッと視線を逸らされる。あーこれ、私の話をしていたのか。それも、よくない話をって。

それだけなら、まだいいのです。

別の日には……。

他ブランドのBA:「ていうかさ、高木さんって休憩時間から戻ってくるの早くない? あれじゃあ、私たちがノロノロしているみたいに思われるよね」

とか。

他ブランドのBA:「うちで買い物するはずだったお客さんなのに、高木さんに取られた。あの子空気読めないよね、本当に」

みたいな話が、ロッカールームの何列か離れたところから聞こえてくるではないですか。が、しかし、悪口とは言っても、なかには自分が反省しなくてはならない内容もありますから、耳と心が痛いけれどグッと噛みしめるほかありません。

あ、そうそう、このときって、聞きたくないのにやけに耳をそばだててしまいません? そのせいで、普段よりも聴力1.5倍状態。言葉の端々まで拾ってしまうから、1.5倍傷付いちゃう。

そこで、当時の私が心を守るためにおこなったのがこれ。

入る前は、大声であいさつ!存在をアピール

至ってシンプルな方法です。

ロッカールームの扉を開けたら、大声で「お疲れさまです!」と言う。ちょっとうるさいくらいのボリュームで。

ほら、先にお話したように、悪口って陰口であることが多いので。本人がその場にいるとわかれば、よほどのことがない限り悪口を言われないだろうと踏んだのです。

まあ、自分がいなくなったあとに言われるのは仕方がないとして。

取りあえずは、この作戦によって自分の悪口を耳にすることがグッと減ったのでした。とは言え、ごくたまにうっかりさんがいることもあって、「高木さんがさあ……」と耳にすることも。

そんなときは、咳払いのひとつでもして、“いますよ!”アピールできたらよかったのかもしれませんが、とてもじゃないけれど無理。
「私は貝、私は貝……」と、耳に蓋をすることに全集中。

あとは、ひたすら存在感を消して、高速着替え。背中を丸めて、ロッカールームをあとにするのみです。もしそこに手ぬぐいがあったとしたら、ロッカールームの出口までほっかむりをして、顔を隠せたらなお良い。

悪口を言われている張本人ではありますが、「あ、ちょっと、高木さんいるよ…」みたいなシーンも気まずくて嫌なのです。

いやいや、女子ロッカールームとは恐ろしいところですね。

あの頃のロッカールームに怯えていた私に、「大丈夫! あなた、約10年後には、一日中部屋着のまま着替えをすることもなく、ひとりで原稿を書いていますよ」と教えてあげたい。

芸能人がSNSでエゴサしちゃうというのも、こんな気持ちなんですかね…。イラスト by Kato

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プロフィール

ライター/ヨガインストラクター高木沙織

「美」と「健康」には密接な関係があるため、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。野菜や果物、雑穀に関する資格を複数所有。”スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ヨガでは骨盤ヨガや産前・産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスでボディーメイクをサポート。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。近年はエッセイの執筆にも力を入れている。