アルム詔子の「5.5センス、信じますか?」
今回は、実家で飼っている「白い犬」と「黒い犬」にまつわる不思議なお話。因縁を持つ犬たちに3度も驚かされた体験をご紹介。
後編は、新しく「オスの白い犬」の「フク」が我が家にやってきたところから。
2度目の衝撃。まさか、アンタだったの……?
平成31(2019)年の正月。
当時、北海道に住んでいた私は、久しぶりの実家帰省を満喫中。居間のこたつに入って、裏庭をボーっと眺めているところだった。こんもりとしたツツジに陽が差す中を、白い影が横切った。「フク」がやってきたのである。
「オスの白い犬」の「フク」は、全く私に慣れない。もちろん、今回の帰省で初めて私を見たのだから、なつかないのも仕方がない。にしても、依然、家族の誰にも慣れずにいるというのは、一体どうしてか。「フク」が来てから、既に2ヵ月は経過しているのに。
じつは、これには深いワケがある。「フク」は野犬なのだ。
京都市に捕獲され、保健所送りになったところを、タイミングよく実家にもらわれてきたのである。つまり、そもそも人間自体に慣れていない。だから、近付くと庭を走り回って逃げるし、触らせもしない。今までの犬とは、決定的に事情が違うのだ。
放し飼い状態で自由に走り回る「フク」。その姿を眺めながら一服していると、隣に父が座った。
「『狐』や言うんや」と父。
「誰が?」
「近所の子どもや。うちの前を通りかかって。フクを見て『狐がいる』って騒いだんや」
「まあ、シュッとして痩せてるもんな、フク。確かに似てるかも」
「それになあ、あいつ、飛び跳ねるんや。ほら」
顔を真正面に戻すと、ツツジの間を飛び跳ねる「フク」が見えた。ハードルを越えるような珍しい動き。確かに、飛び跳ねている。
あっ。
デジャブ。
息が止まりそうになった。どこかで見た光景だ。陽光が降り注ぐ裏庭。ツツジの中を飛び跳ねる白い狐のような犬。
一瞬にして、私はある夢を思い出した。これまですっかり忘れてはいたが。ちょうど1年前の元旦の夜に見た夢。まさか、あの夢は……。
「ひょっとして、アンタだったの……?」
衝撃の事実。アレは「吉夢」ではなく「正夢」だったのか。それにしても1年がかりだなんて。
「そんなん分からんわ」 私は一人、呟いたのである。
