コラム 京女の移住体験記│野生動物遭遇率が半端ない北海道!特に恐れられるのは…あの動物だった【前編】

初めてご対面したシカは、剥製さながらの迫力

そんなシカとの初対面は、突然訪れた。

幸か不幸か、移住してすぐのこと。近所を散歩中のときに「ご対面」となったのだ。これは、恐らく私の住んでいた町の場所と関係があるように思う。

私の移住先であるT町は、北海道の大半の町と同じく、大自然に囲まれた場所だった。地図上では北海道のど真ん中よりも少し右上の部分で、いわゆる「道東」と呼ばれるエリアに当たる。

そのまま北海道の端までいくと、小学校のときに習った、あの「オホーツク海」に出る。当時、「オホーツク」という響きは、遠く離れた異国の海を連想させた。そんな海を、大人になってから毎週末買い出しの度に眺めるとは夢にも思わなかった。

ちなみに住んでいたのは、オホーツク海に面した紋別市(毎週末買い出しに行く町)より30キロほど内陸寄りの町だ。札幌からは車で4時間半、旭川からでも2時間と、主要都市からはかなり遠い距離にある。

そんな北海道のT町へと私とパートナーの彼が辿り着いたのは、3月中旬のこと。

じつは、北海道の3月は、まだまだ雪が積もる季節である。降っては積もり、積もっては解けての繰り返し。そんな景色を横目に、私たちは息つく暇なく、家の補修作業に追われた。その一方で、気分転換と近所探索を兼ねて、夕方の散歩を日課にしたのである。

その日はちょうど雪解けのタイミングと重なり、視界は良好だった。家のそばには川が流れており、その向こうに林が見える。どうせなら対岸へ行きたいと、私たちは橋を探して川沿いの道を歩き続けることにした。

暫くすると小さな橋が見えてきた。橋の先には2つの道、左の道は平坦で民家があり、正面の道は山へと続く緩やかな上り道となっていた。

橋を渡りながら、どちらに行こうかと相談した。

ふと下を見ると、夕日に反射して川の水面がキラキラと輝いていた。なんでもない日常が、正直、これほどまでに満ち足りるとは思わなかった。自然に囲まれて暮らすって、こういうコトなんだ。そんな悟りのような気分に浸っているところで、前方からガサッという音が、突如聞こえたのである。

──なんだ?

──何か…いるのか…?

私たちは、ピタリと動きを止めた。それまで「キレイだー」と褒めそやしていた私に限っては息もせず。ただひたすらに真正面の山道を凝視する。何秒か何分か、どれくらい経ったかは分からない。辺りは静寂に包まれ、気付けば自分の鼻息だけが聞こえてきた(あれ? 私、知らないうちに、息してたんだ…)。

──気のせいかな…

何の異変もないため、私たちは一時静止を解除した。2人してそろりと一歩前に進む。それと同時に、前方の山道にぬうっと大きな影が見えた。

──や、やべえ。

そこには、剥製でしかお目にかかったことのない、ご立派な角を持った「シカ」の姿が…。

なんと運悪く、私たちはバッタリと鉢合わせをしてしまったのである。

その姿とは…【後編に続く】

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プロフィール

ライター/コラムニストアルム詔子

京都府出身のアラフォーライター。バリバリの組織人だった仕事漬けの生活を終わらせて、念願のフリーランスに。スタートは法律・教育・ビジネス関係のライターだが、今は歴史関連、神社仏閣、トラベル、職人探訪など分野を広げて取材、執筆を行っている。

プライベートでは、結婚・離婚・事実婚の「三婚」を経験。現在はパートナーと共に、日本各地を移住する生活を継続中。当サイトでは、「日日是迷走」のほか、事実婚までの道のりを綴った「おひとりさま脱出記」や、「京女の移住体験記」、不思議な話を集めた「5.5センス、信じますか?」を連載予定。