アルム詔子の「京女の移住体験記」
今回の記事は、北海道の美味グルメ探しについて。
移住2年目にして、とうとう夕張メロンを現地買いするべく、遠路はるばる産地まで駆け付けたのだが…。やはり、そこには予想外の結末が待っていたのである。
後編は「夕張メロン確保」に向かうところから。
家族経営の直売店で業者化した私
辿りついたのは、文字通り、町の外れであった。
夕張駅の隣の駅にほど近い国道沿いを慎重に車を進め、ナビゲーションを確認する。
昼食の「カレーそば」がお腹の中で膨れ上がるのを感じつつ、夕張メロン確保に集中せねばと、自らを鼓舞した。じつは、これで訪れる夕張メロン直売店は4軒目となる。これまで3軒回ったのだが、残念ながらなかなかピンと来ないのだ。
この店が最後の望みと腹を決め、私は助手席から車のナビを凝視した。
「もうすぐやから」
「えっ。ないよ?」
「あと80メートル」と、カウントする私。
「えっ。ここかな…? いや、名前が違うな」
「あと40メートル」
「えっ。いや。ホントにないって。ナビの電話番号あってる?」
「10メートル」
「ないって。えっ? あっ。行き過ぎた!」
すぐに空き地に入って、Uターンする。まさか、店の看板が手書きとは思わなかったのだ。
──なんだか、怪しい雲行きだ
今回のお店は口コミの評判も良く、一番の有力候補だったのにと私は少し落胆した。
藁にも縋る思いで店の前に車を止めようとしたとき、他に1台車が止まっているのが見えた。どうやら、営業の帰りと思われる人たちが買っているようだ。ここにきて、初めて店の中で他のお客さんと出会ったことに、テンションが爆上がりした。
私と彼はスパイの如く、目を合わせた。
──これはいける
出迎えてくれたのは、気のいい親父さんと、奥さん、娘さんの3人だ。家族経営の店で、店頭にずらっと並んだ夕張メロンが壮観だ。すぐさま、メロンに貼ってあるシールを見て「共撰品」であることを確認した。私は競り業者のように、ふむ、と1つ頷いた。スパイの相棒に目で、シールOKと促す。彼は分かったのか分かってないのか、やはり、ふむと頷いた。
じつは、夕張メロンは徹底的なブランド保護のため、お墨付きとなる「共撰品」のシールを徹底管理しているという。1枚でも紛失すれば、大問題となるほどなのだとか。つまり、この「共撰品」のシールは、厳しい基準をくぐり抜けた証ともいえるのだ。
さらに、「共撰品」の中でも、上から「特秀」「秀」「優」「良」と4段階にランクが分かれており、「特秀」は、夕張メロン全体の約0.2%しかない超希少果物なのである。
この入念な下調べの結果、私たちは「共撰品の特秀」を狙うことで一致していた。
「言ってくれたら安くするからね」と奥さん。
「予算あったら、それに合わせるからねえ」と掛け声が飛ぶ。
──これは、難しい…
「予算を言う」とは、いうなれば、コチラ側の手の内を見せるのと同じコトだ。ここはもう少し値段の駆け引きを店主としてからと思っているところで、先ほどの親父さんが横でぼそっと呟いた。
「この特秀とか珍しいからねえ、わたしたちでも、口にできないからねえ、せっかく遠くから来てくれたから1玉3,000円とか…」
ハイ、乗った。
値札は6,000円だ。半額となれば話は早い。業者化した私は、大きいサイズを見繕い、すぐさま値段交渉に応じた。あれもこれもと、実家や友達に送るものを確保し、結局、2人で合計11玉を購入したのであった。
