コラム 京女の移住体験記│町内班長が回ってきた!北海道で初めてのご近所付き合いに大奮闘【後編】

アルム詔子の「京女の移住体験記」

今回は北海道T町で、生まれて初めての「町内班長」に奮闘した話をご紹介。

後編は、何やら気になる情報をキャッチしたところから。

【前編はコチラから】

えっ? 「T神社祭り」…? 聞いてないよお…

「ま、まつり?」

どうやら、毎年恒例で、T神社のお祭りがあるという。それも2週間後だなんて、あまりにも急すぎるのではないか。

寝耳に水状態の私は、大いに焦った。だいたい、こんな大事な情報も、町内会長から正式に連絡が来たワケではない。町内のおじいさんからのタレコミで、こちらから問い合わせをして発覚したのだ。一体、他にどんな事態が待ち受けるのやら、分かったものではない。

ちなみに、親切なおじいさんは、追加でこうも教えてくれた。

「班長さんの一番の大仕事だからねえ。ああ、大丈夫。写真があるから」

写真?

それにしても、私は何をさせられるのだろうか。色々とあらぬ妄想を膨らましていると、1枚のお供え物が写った写真を見せてくれた。なるほど。どうやらこれを班長が用意するらしい。まあ、写真さえあれば、なんとかなる。その通りにすればいいのだから、楽勝パターンな気がしないでもない。

ふむふむ。

私は写真を分析した。野菜が山盛りのお皿に。うんうん。それは分かる。あの長いものは多分、昆布だね。左側にはお酒の一升瓶があって、奥にはお茶碗が写っていた。お茶碗の中身を尋ねると、お米と水だと教えてくれた。さらに写真の分析を進めていく中で、ふと、中央のあるモノに目が留まった。

人生初の三度見である。

何度見ても、尾が反り返った「魚」にしか見えない。

それも跳ねている感じが、じつに奇妙だ。

まさか魚?

ないない。さすがに、神社に生モノのお供えとか、ありえないだろう。自問自答して否定していると、おじいさんの解説が入った。

「あっ。それは魚を凍らせてねえ。鱒とか鮭とかね。こう、頭と尾を縛って反り返ったような形で冷凍して、直前に盛ればいいから」

私は、珍しく沈黙した。

実家の京都では見たことがなかったが、そんなコトを悠長には言っていられない。郷に入っては郷に従えだ。私は、早速、翌日から祭りの準備を始めたのである。

近所の人たちが噂を聞きつけて、お供えする野菜を持ってきてくれた。お供え物は、自分の家の前に置くらしい。宮司さんをはじめ色々な人が来るからと、近所のおじいさんが見かねて、うちの伸び放題の草をチェーンソーで刈ってくれた。

別のおじいさんからは、当日にお供え物を置く台を組み立て、砂山を作ってあげると言われ、違うおばあさんは、大きな白いお皿を貸してくれた。町内の方々は非常に協力的で、道で会えば、大変ねえなどと声をかけてくれた。

その傍ら、私はあるモノの準備を進めることにした。

近所のスーパーで「鱒(ます)」を買い、人生初の「飛び跳ねているような形をイメージして、冷凍してください」なる、信じられないオーダーをしたのである。

慣れない仕事で四苦八苦している彼を横目に、私は着々と祭りに向けて準備を進めたのである。

お祭り当日は御輿が来ます!
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