コラム 京女の移住体験記│大自然の北海道で、虫との仁義なき戦いを制したのは…?【後編】

アルム詔子の「京女の移住体験記」

今回は、大自然の北海道生活の中で勃発した「虫たちとの仁義なき戦い」について。

後編は、虫たちの活動が真っ盛りとなる「初夏」の到来から。

第2戦そして第3戦の行方は…?

【前編はコチラから】

ええっ? 5月の北海道で…セミが鳴く?

未だ4月でも、スノータイヤが大活躍するという北海道。ゴールデンウィークあたりで、タイヤの履き替えを行うのが一般的なのだとか。

そんな5月、庭に出れば、様々な虫たちが文字通り花から花へと飛び回っていた。小さくて可愛らしい「エゾエンゴサク」は人気がないようだが、タンポポやスイセン、チューリップなどには蝶やハチが舞い集う。春の訪れを肌で感じる瞬間だ。

寒さしのぎに我が家へと侵入していたダンゴムシも、大地から雪がなくなると共に、完全に家の中で姿を見せなくなった。どうやら和平協定が結ばれようだ。寝起きはコンタクトレンズを付けていないため、踏みつけてしまう恐れもあったが、もうその心配もしなくてよいのである。

こうなると、既に勝ったも同然。

そもそも北海道では、G(ゴキブリ)は冬を越せずに死んでしまうという。これまでの最大の天敵であったG(ゴキブリ)が存在しないとすれば…家の中は安全な場所となる。家の中にいさえすれば、虫たちの心配事は一掃されるのだ。それだけで感無量である。

しかし、そんな安心しきっていた私の元へと送り込まれたのが第2の刺客。

まさかの…予想外の戦法が繰り出されたのである。

それは、5月のある日のこと。

おいしい空気でも吸いながら散歩でもしようと、私は家の外に出た。天気もいいし、移住先のT町唯一の本屋さんまで歩こうかと思っていたところで、信じられない音を聞いたのである。

最初は、聞き間違いかと思った。ざわざわと、木々が揺れ動く音が反響していると思ったのだ。しかし、やはりそうではないようだ。

耳を澄ますと…。

──ミンミン…ミンミン…

──ミンミン…ミンミン…

んな、あほな。

5月やん、なのに「セミ」の鳴き声がする?

それも、春真っ盛りの北海道で?

聞き違いだと、信じ込もうとした。

けれど、冷静に何度聞いても「ミンミン」なのだ。ただ、聞いているだけで暑くなるような、うるさい感じの鳴き声ではない。ちょうど「ヒグラシ」のような鳴き声だ。

「なあ、私、ヤバいかも」

早速、仕事から帰ってきた彼に相談した。

「何が? フルの仕事が恋しくなったん?」

「いや、ちゃう。幻聴が…」

「ナニ、この家、出んの?」

「いや、ちゃう。そっち方面(オカルト)じゃなくて…」

「なんなん?」と、意気込む彼。

「信じられへんと思うけど、セミの鳴き声が聞こえるねん」

そこで爆笑する彼。

「せやな、幻聴ヤバいんちゃう」と笑いが止まらないらしい。そして一言。

「おるで、セミ」

説明によると、なんと、北海道特有の「エゾハルゼミ」というのだとか。一般的なセミとは違い、少し小さめなサイズだという。彼らは本州のセミのように、いきなり飛んで人間の頭や背中に止まったりもしない。非常に上品で、のどかな鳴き声を発するセミだという。

それを聞いてホッとしたのだが…。

いかんせん、山全体に巨大な音響装置が設置されたようで、春に聴く「セミの鳴き声」は、正直、本州から来た私たちの感覚を狂わせる。そののどかな鳴き声に罪はないと分かってはいる。それでも、なんだか収まりが悪いのだ。

結局、第2戦は…。

虫たちの季節感をかく乱させるという大胆な戦法で、両者引き分けとなったのである。

春に聴く「セミ」の音…季節感が狂わされるのです…
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