コラム 京女の移住体験記│上からボトッ…!? 北海道での「続・虫との仁義なき戦い」最強の刺客現る! 【後編】

アルム詔子の「京女の移住体験記」。

移住した北海道の地で繰り広げられる「続・虫との仁義なき戦い」。今回は、私とパートナーの彼を恐怖に陥れた最強の「刺客」について。

後編は、頭上から突如舞い降りた「コオロギ」との戦いの顛末から。

【前編はコチラから】

これぞ、北海道版「未知」との遭遇

なぜ、「水」を出したのか。

自分自身、そんな行動に出た理由が謎である。

なにも水責めにしようと思ったワケではない。そのまま一気に流そうという意図もなかった。ただただ、防御したい、その気持ちに尽きる。虫からすれば「図体のデカいヤツが何を言う」と反論したいところだろうが、実際、私にはこれしか手がなかった。

とにかく守りの一手で、その咄嗟の行動が「水」でのプッシュだったのである。ただ、残念ながら、事態は悪化の一途をたどる。

水に紛れそのままどこかへ逃げれば良かったものを、あいにく不運は重なるもの。蛇口をひねった際に、洗って干していたヨーグルトの容器に手が当たったのだ。容器はそのまま台所のシンクに弧を描いてダイブ。ちょうど、コオロギの背後に落ちて、流れをせき止める「大岩」のような役目となったのである。

激流の川(シンクの中)に、G(ゴキブリ)と見間違うほど激似の「コオロギ」が1匹。その背後には巨大な岩石(ヨーグルトの容器)がそびえ立つ。コオロギは逃げるに逃げられず、ただひたすら滝行のように、真正面から水を全身に浴びたのであった。

約1時間。

こうなったら、もはや世間体など関係ない。「虫如きで」と思われようが、1時間も続くコオロギの滝行を、これ以上見ることなどできない。かといって、水を止めればコオロギはきっと台所のシンクを飛び出して、こちら側へと来るはずだ。その展開は、なおさら耐えられない。

こうしてうじうじと1時間も悩んだ挙句、 私は泣きながら彼にヘルプ催促の電話をした(穴があったら入りたい…。じつに迷惑極まりない女です…)。 会社は車で5分ほどの場所にある。早速飛んで帰って来た彼は、レスキュー隊員のように鮮やかに救出。コオロギは瀕死ながらも、その後一命を取り留め、我が家を囲む原っぱへと帰っていったのである。

あれから、私は変わった。

恐怖心が先走って、危うく善良なコオロギを死なせるところだったのだ。突然の出来事であっても、とにかく冷静に状況を把握する。真実をありのまま受け止めて、的確に判断する。あの瀕死のコオロギから、私は大切なことを学んだのだ。

そう、私は生まれ変わっ…。

──ぼとっ

うん?

またしても、鈍い音がした。

1ヵ月前にタイムスリップしたかのような音だ。まさか、偶然にもあの惨事を思い出していたからか。だから、音が聞こえたように感じたのかも。

いや、違う。

現実に音はした。これから酢の物を作ろうとキュウリの下準備をし手を洗っていた、まさにそのとき。上から「ぼとっ」と、またしても何かが落ちてきたのである。

「ぎゃああああああああああああ」

私はあらん限りの声を無意識に上げていた。

前回のコオロギと同じようで、全く同じではない。

なぜなら、私の甲高い咆哮と同時に、ソレがもの凄いスピードでシンクから飛び出てきたからだ。

私の脳内イメージでは…まさしく一瞬で失神している感じです
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