コラム 京女の移住体験記│「立山」挑戦まであと2週間。標高754mの中級へとレベルアップした結末【後編】

アルム詔子の「京女の移住体験記」。

前回に引き続き、今回もである。新しい趣味として「登山」に目覚めた私たちが、立山に挑戦するまでの「準備」段階の話である。

後編は「小佐波御前山(おざなみごぜんやま)」を登り始めたところから。

【前編はコチラから】

想像以上の旨さに…がぶ飲み注意

スタートだけは、いつも順調のはずだった。

しかし、そんな安定感も今回は発揮されず、すぐさま膝に異変を感じた。歩いて5分も経っていない。なんなら、まだ階段全てをのぼり切っていないのにである。完治せずに登山に踏み切ったからか、それにしても先が思いやられる展開である。

階段は、なんでも460段ほどあるという。1歩1歩進みつつも、休憩したい気持ちがどうにも止まらない。息が上がっては整えるを繰り返していたところで、そんな気持ちを知ってか知らずか、彼が立ち止まった。

どうやら、登山靴の調子が悪いようだ。彼曰く、しっくりこないという。靴紐を緩めて歩く。そして立ち止まる。今度は靴紐をきつく締める。その度に、私は少しだけ呼吸をラクにした。

「先に行っていいよ」と彼。

「いえいえ、そんなのいけないわ」と私。

靴紐を直すフリで、ホントはしんどいんじゃないの…と疑っていると、突如、階段が終了した。最初の山である「猿倉山」に到着である。猿倉城跡地だという。不思議な建物があるのを横目にとっとと通過した。あとで調べると「風の城」という展望台で、夜は風力発電によりライトアップされるとのこと。

「風の城」を通過後、しばらく舗装された林道を進んだ。残念ながら少し下り道となる。せっかくここまで上がってきたというのに勿体ない。そんなセコい気持ちのまま歩いていると、今度は「ふるさと歩道」という案内板が見え、緑豊かな山道に突入した。さらっと「キケン、クマに注意」という看板がお迎えしてくれた。

「えっ? クマいるん?」と私。

ガイドブックでクマの危険がない山を選んだつもりだったのだが…。「クマよけの鈴があるから大丈夫」という彼の言葉のあとに、巡礼の旅に出てくるような鈴の音が、チリンと鳴り響いた。

怯えながらも、私はどしどしと進んだ。今回の登山には、ひそかな楽しみがある。それだけを支えに歩き続けると、「中部北陸自然歩道」の案内板が見えてきた。それにしても、この山は親切だ。なにしろ「~山まで〇㎞」という表示がなされているので、そう気持ちが折れないのである。

表示板によると、第2の山である「御前山」まで1㎞を切ったようだ。前回の尖山(とんがりやま)のようにずっと急斜面というワケではなく、上っては平坦となる。必ず息を調える部分があるので、足を止めずに済みそうだ。急斜面の先に出ると、道が開けた。

さあ、心待ちにしていた「御前山」はもうすぐだ。と、ここで車道と合流する。

えっ? 車道?

なんだよ、それならここからスタートしても良かったのに。またしても湧き上がるセコい気持ちを抑えて舗装道路を進むと、一風変わった建物が見えてきた。錆びた遊具のようだ。ここが「御前山」だという。風通しの良い山頂で、ようやく一息入れることにした。

ああああ。待ちに待った瞬間である。

今回の楽しみは、ズバリ「食」だ。「登山メシ」のみならず、ナッツやチョコなど軽食類も豊富に持参した。もちろん、飲み物もである。

私は彼のリュックから、早速、水筒を取り出した。朝早くに近くのコーヒーショップで、アイスカフェモカを入れてきたのだ。なんせ、登山のときの水は格別に旨い。ただの水があれほど美味しいのだから、きっと、カフェモカだって。いや、それ以上かも。そんな期待を込めてごくりと、一口飲む。

うめえ~! うめえ~よ。

一体、どんなマジックが起こったというのか。カフェモカの甘さが、身体中に優しく広がった。

そんな驚愕した私の顔を見て、彼が「一口」と催促する。博愛の精神で、美味しいよと言って渡した。

彼がごくりと飲む。

さらにごくり。そんでもって、ごくり。あれ、また、ごくり?

ってか、がぶ飲み?

「あかん!」

御前山の山頂で、私の悲痛な叫び声が、こだまのように響いたのであった。

仕事の合間もいいですが、やはり登山のコーヒーは格別!
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