コラム カラスとの前代未聞の攻防戦!田舎のカラスと都会のカラス。戦いを制したのは…?【後編】

アルム詔子の「日日是迷走」。

今回は、ゴミ出しには避けて通れないカラスとの攻防戦について。

後編は、名古屋で初めてカラスにゴミを荒らされたところから。

【前編はコチラから】

まさか…北海道のカラスは可愛い?

散乱したゴミを前に、彼が慌てて家に戻って、新しいゴミ袋を取ってきた。せっせと隣でゴミを拾い集めるのを見ながら、私は思考が停止した。

あああ。我が家の食材の残りが、道端に転がっている。

あっ。赤い…人参のへた。

それを見て、私は北海道に住んでいた頃のことを思い出していた。

じつは、北海道に移住していたときに、私たちはある1羽のカラスに名前をつけていた。いつも、我が家のトタン屋根の上にいた「カー子」である。

カー子は群れない。常に1羽だ。うちのトタン屋根の上が好きで、そこをペタペタと歩き回るのである。日中、家にいながら仕事をしていた私は、最初だけは天井から響くカー子の音に驚いたものだったが、ついにはそれにも慣れてしまった。

ただ、時折、我が家の煙突付近で「カアカア」と鳴いて、私を慌てさせることはあった。煙突を抜けてダイレクトに届くその鳴き声は、何倍も増幅し、臨場感溢れる音となる。突如、家中に響き渡るから、つい、カー子が家の中に入ってきたのではないかと思ってしまうのだ。

じつは、そんなカー子に、1度だけゴミを荒らされたことがある。

それは移住してすぐのこと。恐らく1ヵ月後くらいだったと思う。移住先の北海道T町のゴミ集積場には、頑丈な金網で作られた大きな箱が設置されていた。カラスといえど、さすがにこの中に置かれたゴミは手出しができないようだった。

実際、カー子も金網の箱の周りをうろつき、嘴を突っ込んだりもしていたが、無理だと判断。だから、うちのゴミを狙おうとしたのか。

その日、パートナーの彼は屋外で指定の袋にゴミを1つにまとめていた。詰め終わったゴミ袋を玄関脇に置き、手を洗いに家の中に入ったのである。その間ものの1分のこと。次に私がドアを開けたときには、我が家のゴミが玄関前に散乱していた。名古屋の惨状と同じく、赤い人参のへたが転がっていたのである。そして、その横には、せっせとゴミをつつく「カー子」の姿があった。

「カー子!」

私は叫んだ。しつけのなっていない子犬のように、カー子は慌てて飛び去った。もちろん、我が屋のトタン屋根にである。

憎きカー子め。その時は私も怒り心頭で、それ以降、北海道では一瞬でも絶対にゴミを外へ置かないと心に誓ったのである。再度カー子が我が家のゴミを狙う隙を与えなかったのだ。

そうだ。北海道でカー子にゴミを荒らされたあの日も、彼がこうしてゴミを入れ直していた。まさにデジャブのようだ。

ただ、ゴミを荒らす行為は同じでも、北海道のカラスと名古屋のカラスの態度は真逆だ。

ゴミを拾っている様子をうかがい、集団で上から監視している不気味な名古屋のカラスたち。

一方で、カー子は違う。我が家のゴミを狙ったことを悪く思ったのか、かじりかけの洋ナシのようなものを、次の日に玄関前に落としていったのである。詫びを入れたつもりなのだろう。ゴミ荒らしの現場を見つかってすぐに飛び去るところだって、見ようによっては可愛いのである。

1羽で戦う北海道の孤高のカラス「カー子」。それに比べて、卑怯にも集団戦法でテリトリーを広げていく名古屋のカラスたち。ギャング集団顔負けの図々しさである。そしてこの日以来、不運にもうちの前の通りがヤツらの縄張りとなった。他にも被害に遭う世帯が相次いだのである。

ゴミの回収日には、あの不穏なカラスの鳴き声が聞こえないかと戦々恐々。それは、集積場に置かれた黒い網のサイズが大きくて頑丈になるまで、暫く続いたのであった。

けっこうゴミ出しは大変なのです…
1 2