先日、正社員と非正規社員の待遇格差をめぐる各裁判について、最高裁判決が出ました。
これらの判決を受けて、派遣時代の知人からは「非正規は、退職金とかボーナスが出ないってことだよね」と、企業からは「非正規社員には、手当は出さなくちゃいけないけど、退職金とボーナスはいらないんだよね」といった質問を受けました。
これは、どちらも正しくありません。今回は、具体例をあげつつ、同一労働同一賃金を考える際のポイントなどを考えてみたいと思います。
賃金額の話はお互いタブーだった派遣時代
本題に入る前に、筆者の経験を少しお話したいと思います。
筆者は、弁護士になる前は、派遣社員として各社を転々としていたのですが、職場の規模が大きくなるほど、非正社員の割合が大きかったと感じていました。
非正社員の種類も様々で、企業と直接契約を結んでいる契約社員やアルバイトと、派遣会社から派遣されている派遣社員が混在している職場も少なくなく、派遣社員も、異なる数社の派遣会社から派遣されている職場もありました。
いずれにしても、互いに「賃金額や待遇についてはお互いに質問してはいけない」という暗黙のルールがありました。
非正社員の中でも、賃金額や待遇が違っていたからです。
しかし、人の口に戸は立てられません。「A派遣会社だと時給〇円なのに、B派遣会社は×円、契約社員は△円」といった話が漏れてきます。
時給が50円でも違えば、月額で1万円近く違ってくるので、非正社員の中でも、嫌な空気が流れたものです。
プログラマーなど技術職の派遣の方は、もっと格差が大きく、同じ職場で同じ業務を行っているのに、派遣会社が違うだけで、倍以上も賃金に差がある方々もいました。
そんな職場の正社員はどうかというと、よくある光景かと思いますが、これぞ正社員という姿勢で責任をもって仕事をされている方と、延々とマインスイーパ(フリーセル派もいる)をやっている方や30分ごとに化粧直しや喫煙をしている方など、いろいろでした。
振り返ると、正社員と非正社員との間で不公平感が生じるのは、筆者の経験では、以下のような場合でした。
・働いていないように見える正社員がいる場合
・非正社員の業務が賃金に比べてキツい場合
・正社員と非正社員で特に業務に差がないのに待遇が違う場合
