コラム 母が愛人被害妄想から悲劇のヒロインに……アラフォー世代に刻々と迫る「親のケア」という現実~その2~

年末年始、久しぶりの飲み仲間とお酒を片手に長電話で近況報告をし合っていると、筆者の周囲のアラフォー・アラフィフ世代から複数出てきた話題が「親世代の高齢化のケア問題」です。「少子高齢化」は日本全体が直面している問題でもあり、今後、じわじわと同じような悩みが増えていくのでしょう。

……ということで今回は、そうした問題の免疫力を培うため、この年末年始に筆者が聞いた、高齢の母親の老いによって出てきた問題の実例をご紹介しております。 その1では、筆者の友人・サカキちゃん(仮名:40代・夫の仕事の関係で現在は地方に住むカルチャー系インストラクター)のお母様(まだ70代前半・都内在住)が、夫のリタイア後の生活に対する不満からか、実在しない「エア愛人」妄想を作り出し、錯乱するようになってしまった……という実例と、そこに至るまでの経緯をご紹介しました。 ~その1~はこちら

家族会議の末、お母様の心身の健康状態を、病院で検査してもらう事になったのですが……。

意外な検査結果に家族一同ビックリ!

『ママの着物と宝石を、パパが愛人にあげてしまった!』『家のお金を、パパが愛人に使った!』など、高価なものや現金の紛失と、妄想がからまって錯乱するようになってしまったサカキちゃんのお母様。

しかし、病院の診断は意外にも「心身ともに健康」というものでした。内科的にも、脳にも異常はなかったそうで……。

「つまりは、母は認知症などではない、という結果よ。内臓も脳も健康で……要は、本人が家族の気を引きたくて妄想にとらわれた、という妄想に入り込んじゃってる女優状態?みたいな。

宝石は自分がしまった場所を忘れてただけか狂言で、着物はとっくに母本人が私に贈ってくれたものの事で、お金だって、大昔に家のことに使ったのに、混乱して騒いでたの。ハハハ……」

サカキちゃんは乾いた笑いをたてていましたが、お母様が健康だという現実が判明した部分の安心はあれど、問題の根本は解決せず、引き続きます。なぜならば、
「母のような性格の人に、いくら『あなたの脳は健康で、妄想は周囲の気を引きたいだけの、つまりはワガママなのよ』と正論を言ったところで認めるわけもなく、焦って、より大きな問題を作り出すのは火を見るより明らかだ」とのこと。

……確かにそうかもしれません。

合理的な男性家族と、「同じ女性として彼女の寂しさにちょっと同情する」という気持ちも出る娘

心の渇きが一番の問題で、お母様ご本人が苦しんで助けを求めているという事実は変わらないのに、
病院の診断、という合理的な結果が出てしまったことで、合理的な男性陣……つまりサカキちゃんのお父様や弟さんには「ママの壮大にワガママな性格」という認識が固定され、お母様はより窮地に陥ってしまった形です。

「男性パートナーを持つ、同じ女性である私だけは、すっごい迷惑で母と他人だったら絶対に友達にはなれなかっただろうけど、ちょっとかわいそうって思うところもあって。……だって、うちの母は性格に問題があるとは思うけれど、彼氏や夫に『そこじゃない、ここをわかってよ!』って気持ちは、女性みんなが多かれ少なかれ思ってない?」

「わかる!私自身も、周囲の女子も、程度に差はあれ、根深く不満に感じてるとこ、みんなあるし、聞くし。パートナーに対して『そこじゃない、ここ!』って不満や寂しさを感じたり、それをうまく伝えられないことに悩んだことがない女子なんて、いないと思う」

そして、そうした悩みの中には「たぶん決定的に男性という生き物には伝わらない種類のもの」が必ず、あるのです。

男性側も「女性には絶対に伝わらない」と感じていることがあるのかもしれませんが。

それから、成人して経験を積んだ子どもが「親と赤の他人だったら、きっと友達になっていないタイプだけれど」という言葉も、よく耳にします。親に対してそういう冷静な視点が持てる人間に育った、という部分で、その親の子育ては成功しているのではないか?とも思います。

……という話をしたのが、2019年末にサカキちゃんに会ったときの事です。

1年後は、ちょっと深刻度が増してしまいました。

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