飲みニュケーションの場は職場など普段の社会生活とは別の場での関係が築かれるため、意外に重い話やデリケートな話題を聞く場面が、しばしば生まれます。
今回は筆者がバーで聞いた思いがけず犯罪に巻き込まれた人の話をご紹介しています。~その1~ではフリマで何気なく購入したモノが盗品だったことから、大変な目にあってしまった20代女性のお話でした。
リサイクル品が身近な昨今、読者の皆様の知識として役立てていただきたい一件です。この後編では、より深刻な事件……。殺人事件に巻き込まれてしまった飲み仲間の話をご紹介します。
いい時代を忘れられずにさまよっていた男性を襲った悲劇
筆者がバーテンダーをしていた時代、お店でよくお金を使ってくださるカップルがいらっしゃいました。
30代の男女のカップルで、男性のミナミさん(仮名:スポーツインストラクター)は全くお酒が飲めないのですが、女性のキタさん(仮名:家事手伝い)はよく飲むタイプ。
さらに周囲にお酒をふるまうのが好きな方で、店員だった筆者はもちろん、このカップルとたまたま同席した方々も、キタさんからよくごちそうされました。
キタさんご本人は家事手伝いで、外でお仕事はなさっていませんでしたが、おうちがすごい資産家のお嬢様の様子。その彼氏のミナミさんは自分はお酒は飲めないけど、飲みニュケーションの楽しい雰囲気が大好きだったので、よくお二人であちこち飲み歩いていらしたのです。
キタ&ミナミカップルのお付き合いは、3年は続いていたと思います。彼らを知る飲み仲間はみな、いずれ結婚するものと思っていました。しかし突然別れてしまいます。
別れてから、女性のキタさんは全く飲み屋街に現れなくなりました。しかし、お酒が飲めない男性のミナミさんだけは一人ソフトドリンクを飲みながら、カップル時代に回っていたバーに、深夜にふと現れます。
そして「俺は飲めないから、キミ、飲みなさいよ」と、かつての恋人のキタさんがしていたように、同席した人にお酒をふるまうのです。
ただ、お金持ちだったのは別れたキタさんのほうというのを誰もが知っていました。ミナミさんはごくふつうの所得の勤め人です。しかもミナミさんはお酒が飲めないため、傷心ゆえに思い出の場所から離れられずにそんなふるまいをしていることが明らか。そんな彼を、事情を知る人はみな、ひそかに心配していました。
ある日、ミナミさんにありえないほどの悲劇が追い打ちをかけます。
偶然の一致が強盗殺人事件の犯人と疑われてしまう羽目に!
ミナミさんがバーに現れなくなったとき、彼を知る人は「キタさんと付き合う前の生活に戻ったんだな。もともと飲めない人だから、そのほうが健康かも」くらいに思っていました。
しかし、実情は違ったのです。ミナミさんはなんと、殺人事件の容疑者として何日も警察に拘留されていたのです!
なぜ、そんなことになったのでしょう?後日、無事に放免されて、またバーにいらした南さんのお話をまとめると……。
(1)近くで起きた強盗殺人事件の犯人と同じ銀行キャッシュディスペンサーを使用し、背格好がすごく犯人に似ていた。
銀行のドアには、身長を認識するための機能がついているのだそうです。なにげなく防犯カメラに映ったようでも、細かい身長がきっちりわかるようになっているのだとか。
ミナミさんの住まいの近所で、強盗殺人事件の犯人が、たまたま被害者の預金を下ろしたそうで……。その犯人と驚異的に背格好が似ていたミナミさんに、嫌疑がかかってしまったのです。