コラム 華麗なるデュアルライフのはずが……コロナ禍で崩壊した34歳の二拠点生活~その2~

誰しもが多かれ少なかれ憧れているであろうデュアルライフ。実際のところはどうなんでしょうか。引き続き、 畠田奈津美 さん(仮名・34歳)のお話を伺います。
その1はコチラ

交通費よりもデュアルライフの足かせになったもの

「失業保険関連の事務手続きもあったので、島に拠点を見つけた段階で、いったん東京に戻り、1か月ほど就職活動をしました。フルで働くのは怖かったので、複数の人材派遣会社に登録して、実働週に3~4日程度で、在宅でできるパソコン入力作業の業務に応募しました。

前職はフロント業務ではありましたが、立場上、経理計算などもやっていたので、パソコンは得意だったんです。そのせいか、仕事はすぐに決まりました。正直、運は私に向いている!って思っちゃっていましたね」と苦笑いする畠田さん。

ご両親はどのように思っていたのでしょうか。

「親は大反対でしたよ(笑)。同棲を解消して出戻ってきた30歳過ぎの娘は、母親にとってはキズモノなんです。面と向かって“恥さらし”って罵倒されましたし、泣きながら、“とっとと結婚して出てってくれ ” とも(笑)。でも、東京でひとり暮らしをしながらの二拠点生活は、私には経済的にありえないし。“島で結婚相手を見つけてくるから”とか言って、実家を出ずに押し切りました。

往復の飛行機代を心配する友だちもいましたけど、その島にもLCCが飛んでいるので、さほど痛くはありませんでした。それでも、現地で使う車を中古で買って、家電を揃えて……って準備したので、フリマや人に貰ったり安く譲ってもらったりで、できるだけ抑えたけれど、初期費用で50万円くらいは使ったと思います。

それは、自分の貯金で賄いました。実は、恋人と別れた原因が相手の浮気で……。その人と結婚するから別れてくれって言われたんですよ。ひどい話だったので、慰謝料として少なくない現金を受け取っていたんです。デュアルライフを考えたのは、そのお金を使い切ってしまいたいという気持ちと、もう、同じ場所で、同じ人と長く深い関係をもちたくないっていう気持ちが心のどこかにあったんだと思います」

そんな本人曰く、もっともネックだったのは、「住民票の移し替え」だという。「正直、私は都民でいたかったんです(笑)。でも、島で使う部屋の公共料金の手続きなどがめんどうくさいんですよ。いちいち説明しなくちゃいけないし。そういうのは、家の持ち主がやってくれるんだとばかり思っていたのは誤算でした。

しかも、急に、その持ち主から、“妻からクレームが入ったから、使うなら家賃を払って欲しい”って言われて。すでに、暮らしの準備が整ってしまっていたから、あとには引けず、結局払うことに。もしかして騙された?とも思ったのですが、そこを詰めると、自分がみじめになってしまうので、考えないようにしました」

そして2020年の年明け、新型コロナウイルスがジワジワと近づいてきた。

「派遣先の出社規定が2~3週間に数日あったので、その前後に東京に戻る、という生活を始めた矢先でした。緊急事態宣言が出るとか出ないとかが話題になって、どちらかに異動したら、しばらく動けなくなってしまうかも……という危機感があったときで。それでも当時は3週間程度っていう話だったじゃないですか。

それで、明日、明後日には緊急事態宣言が出るかも、っていうタイミングでいてもたってもいられず、東京から島に飛んだんです。部屋の持ち主には説明していたのですが、数日後に“妻が、緊急事態宣言下で、自粛もできない人間に部屋を貸すなんてとキレて泣いてているから、東京に戻ってほしい”って、また連絡がきて……。

この部屋を使っている限り、こういうことになるんだなと思ったら、結局窮屈に感じてしまって。それで、普通に不動産屋さんを介して、別の部屋を借りることにして引っ越しました。

そして、今、お察しの通り、今はまったく行けない島の家の部屋代と、公共料金の基本料金を払い続けています。ちなみに、飛行機はコロナ禍でルールが変わり、LCCの格安チケットでも払い戻しをしてもらえたのでダメージはありません。

家があるんだから行っても……と思うこともありますが、東京から来たとなれば、もちろん不快に思う人もいるし、コロナ禍の移動はやはり怖いですしね。もう、なんなの!って。今、怒りの矛先は、新型コロナでしかないですね」

☆☆☆

「月に最低1回は行き来していた場所だから愛着もあったし、自分の生活の一部だったけれど、2か月以上行けていないし、もう、当時あった思い入れも薄まっている」という畠田さん。しかし、家財道具や車はそのままだし、戻らないとなれば、部屋の解約も必要になります。

「島には、めっちゃ観光客は来ているそうです。宿泊予約サイトをみたら、確かに島の宿泊施設はほぼ満室でした。予約しているのは東京の人じゃないってことなんでしょうけど、なんだか、自分だけが閉じ込められているような気がして爆発しそうです」

「どこで暮らしてもすることは同じだし、もう行かなくてもいいかな」とすら思い始めていると言う。



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プロフィール

白玉あずき

東京都出身。清泉女子大学卒。学生時代より活字メディアに携わり、四半世紀にわたり女性のおしゃれと恋愛とダイエットについて考察、記事にする。現在は雑誌や単行本の編集、制作に加え、女性コンテンツのプロデュースやディレクションなど多分野で活動。最近の生きるテーマは社会貢献と女性支援。