仕事&マネー レナウンの倒産はコロナだけが原因じゃない?コロナ後のファッション業界

しかしながら、「ヴェルサーチ」をはじめとする高級ブランドなどのドレスに刺しゅうを施しているのは、なんとインドの劣悪すぎる環境。日当数百円で働く刺しゅう職人の手によるものだということが、ニューヨーク・タイムズの取材によって明らかになりました。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンなどは、下請けとなる人々の労働環境を改善する協定を結んでいますが、残念ながらすべての高級ブランドがこの協定に参加しているわけではありません。

これまでも低賃金や長時間労働が問題視されてきた、ファッション業界における下請け事業。

以前問題となったスポーツウェアブランドやファストファッション業界だけでなく、華やかな高級ブランド業界でも同様の暗い問題を抱えているのは衝撃的ですよね。

「ノームコア」という価値観

イヴ・サンローランが語った、「Dressing is a way of life(服装は生き方である)」という言葉。あらゆる情報が手に入る現在だからこそ、ブランドが生き残るにはその「価値観」に共感してもらうことが必要不可欠なのです。

ファッション用語のひとつに、ノーマルとハードコアを掛け合わせた言葉「ノームコア」があります。で、「究極の普通」を指すノームコアファッションは、非常にシンプルなファッションのなかに自分なりのこだわりを持つことを意味しています。

そんな「ノームコア」を実践した代表的な人物が、スティーブ・ジョブス氏です。1980年代にソニーの工場を視察した彼は、作業をする社員が同じ制服を着ていることに強い興味を持ちました。制服が「ソニーの社員である」という共通の意識を育み、会社と従業員を繋げるのに役立つということを知ったジョブス氏は、アップルでも取り入れようとしたのです。

社員からの大反対によって会社全体での制服導入には失敗しましたが、少なくとも自分だけは取り入れようとブラックのタートルネック、リーバイスのデニム、ニューバランスのシューズという自分のスタイルを確立。ジョブズ氏を象徴する、印象的なファッションが生まれたのです。

ちなみにあのタートルネックは、当時ソニーの制服を担当していたイッセイ・ミヤケにオーダーしたものだそうです。

コロナ後の「New normal」で生き残れるかどうか

新型コロナウイルス後の「New normal(新しい価値観)」が定着した世の中では、それに合わせたビジネスを行なえる企業が発展して存続していくことになります。多くの消費者が知り得なかった製造の裏側をインターネットを介して知られるようになった今、しっかりとした倫理観やオンラインによる優れた販売ノウハウを持つブランドが好まれていく可能性が高いでしょう。

数十年後には、現在の「高級ブランド」が影を潜め、異なる価値観を持ったブランドが多くの人々の支持を集めているかもしれません。

文/山根ゆずか

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