平和で穏やかな日々を過ごしていたのに、あるきっかけで世にも恐ろしい体験をしてしまう……まさに一寸先は闇。一番怖いのは人間?働く女性たちが体験した、「本当に怖いと思った」出来事を取材していく本シリーズ。今回、お話を伺った水本千尋さん(仮名・27歳・翻訳業)は出会って2回目だというのに、結婚を強要されそうになったという心底震える体験をしたそうです。
彼とお近づきになりたかったのは私
千尋さんは、小花のついたワンピースが顎あたりで切りそろえたショートの髪によく似合う小柄な女性です。童顔のせいで、歳のわりに若く見えるのが悩みだといいます。そんな千尋さんが4年前、まだ駆け出しの翻訳ライターだった頃に知り合った男性との話を伺いました。
「自分の都合で近づいた私も悪かったんだと思います。彼を誤解させてしまったんです」
千尋さんが彼と知り合ったのは、先輩を通じての紹介だったといいます。当時千尋さんは自営で仕事をとっていたものの、これといったコネもなく、思うように仕事が取れず悩んでいたそうです。それを見かねた先輩が、自分の知り合いで旅行会社に勤める友人を紹介してくれました。その彼は大手旅行会社東京本店の企画部に勤めていて、千尋さんも会えば何か力になってもらえるんじゃないかと淡い期待があったそう。たまたま彼が関西の実家に戻るというクリスマスイブの日に、先輩を交えて3人で会うことになりました。
「実は、先輩がどんなふうに彼に話を通してくれていたのかわかりません。でも、クリスマスイブなんて日も悪かったですよね。これも彼を誤解させたところかも。ただ、会話の内容は終始仕事や翻訳の話ばかりでしたし、彼は私より一回り以上も年上だったこともあって、私は恋愛対象として見られているなんて思いもしなくって。私は仕事が欲しかったから、積極的に自分の連絡先も教えてしまいました。彼からすれば、私が積極的に言い寄ってきたように思えたのかもしれませんね……」
その後、千尋さんと彼は連絡を取り合うことになるのですが、まさかこの連絡が愛を育んでいることになっているとはその時の千尋さんは気づきませんでした。