堅実女子の皆さんは、前髪を立てて、ボディーコンシャスなスーツに、チェーンベルトで、 激しく踊る高校生たちのダンスを見たことがないでしょうか?このダンスで日本一に輝いた大阪府立登美丘高校ダンス部は、 このダンスを「バブリーダンス」と名付けていました。
今ほどオープンではなかった80年代
Netflixが制作した連続ドラマシリーズ『全裸監督』は、 そんな80年代、バブル期にのし上がったAV監督・ 村西とおるをモデルにした、波乱万丈な物語を、 当時の風俗を詳細に再現することで、魅力的に描いています。
ストーリーは、さえない英語教材のサラリーマンだった村西とおる(山田孝之)が、チンピラのトシ(満島真之介)と出会い、裏の社会に飛び込み、“エロ”を商売にしてのし上がっていく姿を描きます。村西は、手始めに「ビニ本」と呼ばれた、過激な描写があるヌード写真集の販売を手がけます。
街の書店を次々と買収して、ビニ本を扱う一大アダルト書店チェーンを北海道に作り上げると、編集者・川田研二(玉山鉄二)とともに、さらに修正なしでヘアや性器が見える違法なヌード写真集「裏本」の製作と販売に手を染めようとします。ライバルからの嫌がらせや警察の摘発などを、さまざまな困難を乗り越えて、彼らはアダルトビデオの製作に乗り出すのですが……。
と書いてみると、まるで、日曜9時の池井戸潤原作のビジネスドラマのようです。ただし、このドラマを見る前に大前提として知っておきたいことがあります。80年代は、性器ではなく陰毛が見える程度の写真でも、警察からわいせつ書画として摘発を受けるぐらい、社会的には問題でした。わざわざ性器や陰毛が見えないように、写真は黒塗りで隠し、ビデオにはぼかしを入れていました。
それだからこそ、「隠されていたものが、見える」に価値を感じ、ビニ本や裏本、アダルトビデオに人々は熱狂をしたわけです。村西は、世間から咎められたり、警察に摘発されたりすればするほど、その裏をかくように次々と手を考え、隠されているものを見えるようにすることにこだわりました。彼が、時代の寵児となったのは、80年代のこういった背景があることを知っておくと見やすいと思います。