堅実女子ニュース&まとめ 人生の岐路に立ったら……仕事小説の名手が語る「自分に賭ける」ことの大切さ

 多重債務に陥らないために磨く力

――お話を伺っていると、自分自身で判断し、前に進む力を養わなければならないと感じます。

青木:はい。あすみちゃんも、結局自分で決めて前に進むうちに、強くなっていきました。一見、楽に見える道と言うのは、その先に地獄が待っていることがあります。例えば、クレジットカードのリボ払い。高い金利を支払い続けて、長期間返済を続ける支払いが問題になっています。でもあれは1回やってしまうと、そっちに慣れてしまうという話を聞きました。多重債務に陥ったり、心身に深くダメージを受ける夜の仕事を始めたり……でも、そこで「何かおかしい」と察知する力と、ギリギリでも踏ん張る力を持つことが大切。この力を持つ人は多数います。『派遣社員あすみの家計簿』はそこを書きたかった小説でもあるのです。

――自己評価が低いと、踏ん張れない人がいると言われています。

青木:作中にも、様々な要素が重なり、定職が持てない女性が登場します。その状況は、環境によるものであり、本人の努力不足ではないのです。そのような連鎖についても、この小説で書きたかったことです。

――ただ、試練を乗り越えるうちに、自分で自分を肯定することができていきますよね。

青木:自己肯定力は境遇や性格によるものが大きいですが、訓練で身につけることもできると思います。小さな成功体験の積み重ねが自信になります。例えば、お菓子やパン、ちょっとした小物など欲しいものがあったら自分で作ってみれば、スキルを身に着けられます。それを、誰かのために作れると、さらにその力は高まっていくのです。

自分で決めたキャリアと仕事は裏切らない。しかしダメだと思ったら引き返す勇気は必要。

――堅実に生きるよりも、経験を重ねて人生のバクチを打ったほうが、豊かであるような気がしてきました。

青木:まあ、それは個人の考え方によります。私も、会社を辞めずに、のほほんと暮らしていく人生もありました。時々趣味で小説を書いたりして。そちらでも幸せだったかもしれません。どちらがいい悪いとは思いませんが、どちらであっても、自分で選んだことであれば、引き受けることはできると思います。

――あすみちゃんも、公務員の男性に言い寄られるところがあり、そこで結婚してしまえば、人生が安定したのに……と読者は感じるはず。

青木:あすみちゃんはイケメン好きですからね。そこが弱点でもありますが、どうなんでしょうね……。自分が正義だと疑わず、説教臭い公務員と結婚したら生活は安定するかもしれませんが、幸せになるかどうかは未知数。でも、それは本人の価値観ですからね。

――「結婚は恋愛ではないから、スペックを優先せよ」という婚活のセオリーはあります。

青木:そうなんですか……。でも、それも年齢によって違うのかもしれませんね。アラフォー以上になると、そのセオリー通りに、経済力と安定感は大切だと思えるのですけれど、アラサーには可能性がありますから。でも大切なのは、自分の軸で判断すること。この軸があれば、人は幸せになれると感じます。

 

『派遣社員あすみの家計簿』(小学館文庫)著/青木祐子 イラスト/uki 640円

\お話を伺ったのは……青木祐子さん/
小説家。獅子座、A型、長野県出身。『ぼくのズーマー』で2002年度ノベル大賞受賞。著書に『幸せ戦争』『嘘つき女さくらちゃんの告白』(ともに集英社文庫)、ドラマ化もされた『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~』シリーズ(既刊6巻・集英社オレンジ文庫)ほか多数。最新刊は『派遣社員あすみの家計簿』(小学館文庫)。Twitter:@mawarimithino

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