堅実女子ニュース&まとめ これ実話!?映画『ハリエット』の戦うヒロインを演じるシンシア・エリヴォを見逃すな!

19世紀アフリカ系アメリカ人を取り巻く環境を丁寧に描く

主人公のミンティは、メリーランド州の農場で奴隷として働いています。ミンティの母が45歳になったら子どもも一緒に奴隷の身分から解放する――急死した農場主エドワードの曾祖父と母親が交わした取り決めは実行されず、母親が57歳になったいまもミンティは奴隷のまま。自由黒人である夫ジョンとの子どもを自由の身にしたいという願いもかないません。

ん?と、映画を観ながら立ち止まりました。当時のアフリカ系アメリカ人には自由黒人と奴隷がいて社会的立場が異なり、両者で婚姻関係を結ぶこともできた、そうしたことを筆者はよくわかっていなかったのです。生れたときから自由を手にしたことがなく、奴隷として酷使されてきたミンティに対して、夫ももちろん日々厳しい労働を強いられているけれど自由黒人として立場の違いがある。この映画ではそれらも丁寧に描写していきます。

しかも農場主側、一家の主であるエドワードを失い、借金の返済に滞り、しだいに追い込まれていくさまも観客の感情移入を誘います。偏りなく、そこも丁寧。だからこそ19世紀を舞台にしたアフリカ系アメリカ人女性の戦いの物語が、他人事と思えない切実なものになっているのです。

自由黒人の夫ジョンと奴隷のミンティ。2人は深く愛し合うも、過酷な運命に襲われる。

力強く画面に存在するシンシア・エリヴォ

けれどこの映画はやはり、ミンティを演じるシンシア・エリヴォの存在抜きには語れません。動画でもなんでもいい、まずは彼女が『スタンド・アップ』を歌う姿を観てみて下さい。単に歌が上手い、とかじゃないんです。どっしりとまっすぐに大地を踏みしめて立ち、強い瞳で正面を見据え、足元からじわじわっと響くような低音ボイスに一瞬で心を奪われるはずです。次第に高まる音楽、それに呼応してどこまでもまっすぐに伸びていく揺るぎない高音。画面越しだからそんなはずはないのに、まるで風圧を感じるような歌声です。とにかくすげぇ。

映画の中の彼女もまた、どっしりとしています。衣裳をつけてカメラの前で役を演じている、とは思えず、カメラを見据える強い瞳はミンティそのものに思えます。彼女は幼少期に頭蓋骨陥没という重傷を負った後遺症で強い眠気の発作に襲われるナルコレプシーに苦しめられ、「主とともに」と神のお告げを信じて神がかった行動力で突き進むのですが、そのすべてが彼女の存在を通して説得力を持って語られます。

神がかった行動力を示すミンティ。劇中、ミンティがほんの少し口ずさむ歌は、画面の空気を一瞬で変える。

「自由か、死か」――命ぎりぎりで自由の地を目指し、やがて家族を救うため、仲間のために、なんども命がけの行動をとります。決してあきらめず、困難に屈指ることもない。こんな人が本当に実在したのか……。信じられない思いで、画面を見続けることになるでしょう。

文・浅見祥子

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