「ある日、突然、高年収だった夫が仕事を辞めた……」「高年収の夫とどうしても離婚したくなった」そんな“事故”ともいえる事態に直面した時、妻はどうするのか。
この連載では、年収1000万円以上の夫がいる妻を“セレブ妻”とし、高年収の夫が無職になったり、離婚したりした背景と、妻の考えをひもといていきます。
今回は佐々木直子さん(仮名・38歳・無職)。彼女の夫はグローバル企業に勤務しており、年収2000万円以上。会社が借りている、都心の家賃30万円のマンションに住む、セレブ妻でした。夫と別の女性との間に子供がいることがわかり、現在は別居中。
【その1はこちら】
夫に収入があると、好きでもない仕事を続ける気が起きなかった
夫は、仕事がうまく進まないと、モノに当たったそうです。
「転職以前もモノには当たっていましたが、そうでもなかった。7年前にグローバル企業に転職してから、テレビを3台壊していますからね。私に直接的に暴力をふるうことはないけれど、モノに当たる。一時期、彼が家に帰ってくるのが怖かったことがあります。食器は粉々、本棚は倒されて本が散乱している。私が片付けないと『早くやれよ!』と言い続ける」
子供でもできたら変わるのかと思い、5年前に妊活をスタート。このときに、直子さんはそれまで勤務していたメーカーを辞めます。
「妊活を始めると、夫婦の連帯感が強くなった気がして、『このままこの人に食べさせてもらおう』と思ったのが大間違いでした。それに、不妊治療しながら働くのは厳しかった。別にやりたい仕事ではないですから。でも、今では後悔している」
夫は、毎月20万円の生活費を直子さんの口座に振り込んでいた。食品や生活必需品は、夫の口座から引き落とされるカードで支払っていたといいます。
「ケチではないんです。でも、お金に執着しないから、貯めてもいないと思います。『また稼げばいいや』という性格。夫のいいところはそこだけ。不妊治療もかなりのお金をかけましたが、その費用は夫の実家が出していました」
ただ、夫は暴れる人間。医師から「夫の精子量が少なめ」と言われた後は、特に激しかったそう。
「医師の前では、真摯な態度で話を聞いているんですが、家に帰って暴れる。私が部屋の掃除をした後は、ウソのように優しくなる。不妊治療前までも、定期的に夫婦関係も持っていたし、暴れて片付けた後には激しく求められました」
そんな生活を5年続けて、実らなかったところで、別の女性に子供を産ませ、別の家庭を築いていることが、在宅勤務でわかったのです。
「どうして子供がいるの?と聞いたら、『俺、長男だよ。直子は俺の跡取り産んでくれないじゃん』と。さらに夫の精子に問題があると言われたのに、現在25歳だというその女性の間には、すぐに授かったこともあざ笑うように言われました。全身から、サーっと血が引き、手足などの末端がしびれてくる。意識はしっかりしているのに、体が動かない」
一番ショックだったのは、「子供を産まない私が悪い」という空気を夫が瞬時に作ったこと。
「これが夫の“能力”なんだと思いました。このままでは、私が夫の価値観に取り込まれ、存在が消されてしまうと思ったんです」
自分の存在が夫に消されてしまうという恐怖