昨今、選択制夫婦別姓への関心が高まっています。
有名な動きとしては、サイボウズの社長・青野慶久さんが起こしている訴訟があります。ですが、いまだに決着はついておらず、今の日本では結婚したらどちらかが相手の姓にしなくてはならないことに変わりはありません。
夫婦同姓婚(法律婚)のカウンターとして「事実婚」という結婚の形があります。法的には「非親族の男女同居の世帯」としかみなされませんが、国勢調査では、内縁関係にあれば夫婦として取り扱われます。
今回の記事では、事実婚実践者のお話も伺いつつ、事実婚とはどんな結婚形態なのかを説明していきます。

なぜ進まないのでしょうか?
事実婚といえども結婚には変わらない?
実際に事実婚をしている人たちに聞いてみると、事実婚の内情は法律婚と特に変わらないといいます。とはいえ、法的な側面ではやはり大きな違いも。
事実婚と法律婚との共通点
事実婚と法律婚との共通点は以下の通り。
- 同居して生計を同じくしている
- 住民票が同じ
- 家の中での役割
籍を入れていないからといって、生計まできっちり分けているケースの方が稀です。また、住民票の続柄を「同居人」ではなく、「夫/妻(未届)」とすれば、ほぼ夫婦と認められます。携帯電話会社の家族割りも認められます。
住民票の筆頭者には夫でも妻でもなれますが、子どもがいる場合、子どもにとってお父さんはお父さんですし、お母さんはお母さんです。
外から見れば、普通の法律婚家庭とどこも変わったところはありません。
事実婚と法律婚との違い
次に、事実婚と法律婚の違いを見ていきます。
- 相続税控除・配偶者控除・医療費控除など税金関係の権利がない
- 相手が死亡したときに法廷相続人になれない
たとえ専業主婦であっても籍を入れていなければ、日本特有の配偶者控除の恩恵を受けることはできません。また、相手が死亡したときに法廷相続人になれません。相手の死が近いことがわかって、相手を説得して入籍した年配のカップルもいました。
こうしてみると、事実婚の法律婚との違いはそのままデメリットともいえます。
籍を入れないことでどんなメリットがある?
法律婚とそれほど違いがないのであれば、なぜ事実婚を選ぶのか、疑問に思う人もいるかもしれません。それに加えて税金面などでメリットがないのであれば、なおさら不思議に思う人もいるでしょう。
実際に事実婚をしている(していた)人たちに、事実婚のメリットを聞いたところ、
- 苗字を変えなくてもいい
- 親戚づきあいから解放される
- 気持ちの上でなんとなく自由
- 離婚しなくていい
といった点が挙がってきました。
結婚は契約ですから、それによって守られることもあれば縛られることもあります。事実婚を選ぶ人は、契約に縛られることよりも自由を選ぶ傾向が強いと感じました。
また、苗字が違うと「家に入った」感は皆無です。親戚の冠婚葬祭に出席することはあっても、あくまでも個人として出席するかどうか決められるのは、事実婚ならでは。
「離婚しなくていい」と答えてくれた人は、両親が離婚はしないものの仲が悪く、そもそも結婚にいいイメージがなかったといいます。だったら自分は結婚せず、ずっと仲良くしていたいという想いもあり、事実婚を続けているそうです。
デメリットとして、「法的な離婚ができない」点を挙げた人も。彼女の言い分は以下の通り。
「一時期すごくパートナーと仲が悪い時期が続き、別れたいとまで思ったのですが、離婚したいと思っても、結婚していないからそれもできない。ある意味地獄でした」