堅実女子ニュース&まとめ 線路の落とし物から見えてくるもの……。レアな仕事〜深夜の駅・線路清掃編〜

世の中にはさまざまな職業がありますが、その中でもレアなものをご紹介していくこのシリーズ。
朝起きて会社に出かけてお仕事をする人は多いですが、中にはみんなが寝静まった後に働いてくれている人も…。今回フォーカスを当てたのは、終電が終わった後、誰もいなくなった駅の構内を掃除する、深夜の駅清掃のお仕事。 日中に目にすることがない、レアな仕事の実態に迫っていきます。

終電で集合し、始発で帰宅

お話を伺ったのはアングラな舞台がメインの活動をしている、俳優のコウさん(39歳/男性/独身)。役者のみで生活していくのは難しいので、さまざまなアルバイトをしてきたそうです。

「基本的に、アルバイトは深夜か早朝しかできないんです。日中は大体舞台の稽古があり、夜は公演もあったりしますから。安定した職業ではないですから、役者のかたわら、色々なバイトをする人は多いですよ。役者以外の仕事をすることは人間観察にもなるし、役者としてのスキルにつながりますね。

駅の清掃のバイトをしていたのは、もう7年ほど前になります。タウンワークみたいな求人情報誌で見つけました。自分は夜型なので、深夜だし短時間だし、ぴったりじゃん!って思って。掃除とか、黙々とできる作業は嫌いじゃないんです。

駅清掃のバイトは終電後に始まるので、現場には終電に乗って集まっていました。指定された駅に集まって、4時間くらい働いて始発で帰宅する、という感じです。短時間なので楽チンでしたよ」

気になる仕事内容や時給は…?

駅のどんなところを掃除したのでしょうか?深夜ということは時給もいいのですか?

「給料は当時の日当で9,000円くらいでした。でも7年前の話なので、今なら1万円くらいにはなるんじゃないでしょうか?例えば品川駅を掃除するとなると、大体1ヶ月程度、平日はほぼ毎日、終電で品川駅に通います。駅は広いから、掃除するところがたくさんありますからね。ひと駅につき、1ヶ月くらいはかかります。

清掃は配給される制服に着替えて行いました。制服はシンプルなポロシャツ的なものと、パンツでした。その清掃会社が秋葉原の近くだったせいか、働いている人たちはいわゆるオタク系の方が多く、あまり話に入れなかったので、本当に黙々と掃除していました。

仕事内容は、駅構内の清掃や、線路のゴミ拾いです。駅から100メートル程度までの距離を歩いて、線路に落ちてるゴミを拾ったり、構内の天井のホコリを落としたり、壁を磨いたりなどです」

線路には色々な物が落ちていた

仕事をしていて印象深かった出来事などはありますか?

「よく覚えているのは品川駅の天井がすごく高かったことです。4段か5段掛のイントレ(※)に乗って天井のホコリを落としたりもしました。可動式になっているイントレを押して進んでくのですが、めっちゃ揺れるんです。品川駅へ行ったことがある方はわかると思いますが、天井がすごく高いんですよ。でもその頃は、命綱も特になかったので、今になって考えると危なかったな〜。よくあんな高いところで平気で掃除してたな〜と思います。

他には、線路に色々なゴミが落ちていたことですかね。免許証やケータイなんかも落ちています。そういう駅の清掃は数年に1回、巡ってくるくらいの頻度なので、もう落とし物はボロボロになっています。なのでよっぽどのことがない限り、落とし主を探せるような状態ではないですね」

※組み立て式の足場のこと

山積みの空パックの正体は…?

線路には色々な落とし物があるんですね。何か印象的な落とし物はありましたか?

「そうですね…。お金とかもたくさん落ちていたのですが、面白いのは、日本円だけではなく、色々な国の小銭が落ちてたことですね。『シェケル』というイスラエルのコインが出てきたのは驚きましたね。自分はたまたま以前にイスラエルに行ったことがあったのでわかったのですが、そんなに旅行先としてメジャーではないですからね。イスラエルから日本に来ていたのか、イスラエル旅行に行った人の落とし物か……。

あと、線路は大体バラバラにゴミが落ちているんですが、1箇所だけなぜかゴミが山になっているところがあったんです。見ると、同じ野菜ジュースの紙パックの空がそこだけに山積みなんですよ。不思議ですよね。

でもちょっと推理すると分かるのですが、そこで毎日同じ野菜ジュースを飲んで、線路にポイ捨てして通勤している人がいるということなんでしょう。毎日ホームの同じ場所から同じジュースを飲んで、電車に乗るんでしょうね。ポイ捨ては良くないですが、知らない人のそんなプライベートな習慣が、ゴミから垣間見れるのは、なんだか面白いですよね。

そんな感じで1年ほど働きましたが、舞台が忙しくなったのを機に辞めました」

線路のさまざまな落し物からは、想像力が掻き立てられるそう。

黙々と清掃するだけかと思いきや、ゴミから人のプライベートな一面に触れるなど、思わぬ発見もありそうな深夜の駅・線路の清掃のお仕事。ふだん何気なく通り過ぎていく駅を、そうやってきれいに保ってくれている人がいると思うと、温かい気持ちにもなりますね。線路へゴミのポイ捨てはしないようにしましょう!

取材・文/まなたろう