堅実女子ニュース&まとめ 有名デザイナーも思いを馳せる、日本ファッションの“現代史”を目で見て感じる初の展覧会、開幕!

日本のファッションの歴史について、書籍や雑誌で触れられることはあっても文章が主で、少しの写真やイラストで解説されているものがほとんどだ。その時代をリアルに過ごしていない者にとっては、「そういうもの」という知識として理解するしかなかったように思う。さらに近年のものとなると、文献にもまだなっていなかったりもする。

だから、2016年にBEAMSの40周年記念プロジェクトの第一弾として『TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)』MVが発表されたときには、本当に度肝を抜かれた。

※BEAMS公式チャンネルに掲載されているものは限定公開に変更されているので、オリコンの公式チャンネルはこちら https://youtu.be/L5X1bOPmUsk

BEAMSが創業した1976年から2016年までの東京を中心としたファッションの変遷が、豪華ミュージシャン陣による音楽やカルチャーキーワードを添えて、カルチャーの“空気感”とともに押し寄せてくる、まさに“エモさ”にぶん殴られるようなすごいムービーだったのだ。好きすぎて100回は見たし、今も時々、思い出しては見るくらいなので、見たことがなかった方は、ぜひ一度見てほしい。

『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会』 いよいよ開幕!

1年の延期を経て待望の開幕!

一方で、2021年6月9日(水)~9月6日(月)まで国立新美術館で開催されている展覧会『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会』は、非常にフラットな展覧会だ。

敗戦後の日本において、着物から洋服へ移り変わり、洋裁ブーム、日本人デザイナーの活躍によりファッション消費への変化、若者の発進するkawaii文化、サステナブルな近未来ファッションというふうに、10年区切りで見ていくことができる。

驚くのは、その圧巻の物量だ。出品点数は約820点、トルソー(マネキン)の数は約250体、洋服の点数は350点にも及ぶ。ファッション系の編集の仕事を20年行ってきた筆者でも、画像で見たことはあっても、実物を目にするのは初めてのものばかりだ。

何時間でも眺めていられる。

リアルなモノ、なかでも熱量をこめてつくられたモノのもつパワーというのは凄まじく、洋服の描くライン、細かなステッチ、生地感など、この時代にこんな素晴らしいものがあったのか、といちいち足を留めて魅入ってしまう。

ものすごい数のトルソー、これは本当に本当に一部です。

印刷物も豊富に展示されており、世相が反映されたキャッチコピーや、普遍的な美しさをもつグラフィックデザインの秀逸さなど、どれも見ても見ても見飽きないのだ。

画家・ファッションイラストレーター中原淳一さんによる、ファッション雑誌「それいゆ」も。

日本を代表するデザイナーもそれぞれ思いを馳せた

コシノジュンコさんの作品が集められたコーナー

内覧会の取材にて、デザイナーのドン小西さんはこうコメントした。

「こういう(日本のファッションの歴史が一堂に会した)のは、ファッションショーでやったのが1985年の読売(新聞社)のチャリティー(イベント)ですよね。それも東京コレクションが始まる前なので、2回目のすばらしい会だと思います。デザイナー冥利につきます」

「この当時……2000年までではありますが、ただがむしゃらに時代を切り開いているときだったから、気兼ねなく自分の作品をつくれましたよね。今の時代は情報がありすぎて、個性がなく、大量生産嗜好ですから、今の(デザインをする)人にはハンディキャップだったりするようにも思います。でもファッションというのは歴史、時代を反映するものだし、作り手の内面を表に出すものだ思いますから、今の時代にあったものづくりをしていって、次の世代に残していってほしいと思います。僕らは先輩として、それを見るのを楽しみにしています」(ドン小西さん)

囲み取材に答えるデザイナーのコシノジュンコさん(左)、ドン小西さん(右)。※撮影時のわずかな時間だけマスクを外しています

同じく、デザイナーのコシノジュンコさんはこう答えている。

「日本のデザイナーの遍歴というのが、これを見ればすべてわかると思うんですね。常に外国を意識して(日本の)ファッションというものがありますが、最初は外国は遠い世界でした。でも今やパリやニューヨークやロンドンが身近に感じられるようになるほど、挑戦してやれてきたというのを、着物から始まる日本のファッションのひとつの時代として、それを知らない若い人たちにも見せられる初めての機会ですよね。

意外とデザイナーって、人の作品を見ることがないんです。外国に行っていても、オリジナリティが出せるように、 マイペースに影響されないようにやっていかないといけない。バイヤーやメディアの人のように、広い目でモノを見るのと、モノをつくる側では見方が違うと思うんですね。

でも今回私は、(この展覧会で)一気に見ることで『ああ、これはこういうことだったのか』って、いろいろなデザイナーのことが初めてわかりました。

これからも世界は変わっていき、次の世代の人たちは完全にデジタルの世代になると思いますが、その移り変わりの時期に、いろいろな日本のデザイナーが頑張ってきたことを、この展覧会で見せられるのは、すごくよかったと思います。過去を知らない人が多いですから、これを咀嚼して次にいかれる、そういう展覧会になったと思います。本当にここまで、よく集めたと思います」(コシノジュンコさん)

デザイナーのツモリチサトさん。 ※撮影時のわずかな時間だけマスクを外しています

同じく会場に足を運んだデザイナーのツモリチサトさんも「日本のファッションは昔の人たちがいて、今の自分たちがあると実感した」「すごく見ごたえがあり、ファッションと経済は比例してるんだなとわかった」と感想をコメント。歴史をつくってきた主役であるデザイナーたちも、圧巻の展示をみて過去を想い、未来のファッションへ思いを馳せているようだった。

未来をつくっていく注目デザイナーの作品も。

客観的視点でフラットに並べられた“プロのお仕事”

冒頭にBEAMSの“エモい”MVとは真逆の、フラットな展覧会であると書いた。音声ガイド内で、この展覧会を担当した国立新美術館の主任研究員である本橋弥生さんは「あえて白のシンプルな空間に展示することで、洋服のパワーが伝わるようにした」と述べている。

時代を追って、社会の出来事とリンクさせるようにファッションの歴史をそれにまつわる洋服や印刷物、映像をならべ、ときにはコーナー展開されているものもある。そこには、点数の差はあれど「良い」「悪い」「上」「下」はなく、あらゆるファッションが、平等に並べられている。

デザイナーズファッションも、ヤンキーが好んだ学ランも、ユニクロのヒートテックも、日本のファッションの変遷の一環として同じように並べられている。

ヤンキー学生服(短ラン、ボンタン)の展示まではわかるとして、学ランの「ボタンの裏側のヤンキー的おしゃれ」とされた「裏ボタン」の展示まであってびっくり。筆者は世代的にわかってしまうがほとんどの若い方は初めて目にするのでは。

それはまさに「ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会」というタイトル通り、世相の象徴としてのファッションを、膨大な資料を丹念に俯瞰して見つめ、私たちに伝わりやすいように道筋を整理し、洋服そのものを通して時代を魅せていく形が取れているのは、ストーリーを魅せるプロである美術館で行われている展覧会ならではだと感じた。

ユニクロのヒートテックの変遷を展示したコーナー。

一方、くだんのBEAMSのMVは、ファッション業界をそのものをリードしてきた“立役者ならではのエモさ”あふれる作品だ。(ちなみに今回の展覧会にはBEAMSもがっつり資料提供など協力している)

つまり研究発表のプロフェッショナルの見せ方と、ファッションのプロフェッショナルの見せ方、どちらも「一流のプロのお仕事」。だから、どちらもアプローチは違えど、私たちの心に響き、もう一度といわず何度も見たくなるのだ。

さて、ここまで長く書いておきながら、具体的な展示物に触れているのが40文字くらいしかないという驚きの事実。筆者の興奮をそのまま書いただけでは「プロのお仕事」失格になりそうなので、展示物の具体的な紹介は後日改めて。……よくここまで語ったなと我ながらびっくりである。

ちなみに、本展覧会は混雑緩和のため事前予約制(日時指定券)が導入されている。スマートフォンを所有していて、カード決済が可能な方は、美術展ナビチケットアプリ「美術展ナビ」から予約をして行こう。

物販コーナーにある「ファッションキーワードバッジ」。書体のデザインもふくめて秀逸。

「ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会」

会期/2021年6月9日(水)~9月6日(月)
会場/国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
住所/東京都港区六本木7-22-2
休館日/毎週火曜日
開館時間/10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで。※入場は閉館の30分前まで。
(開館時間は変更になる場合がございます。)
主催/国立新美術館、島根県立石見美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
展覧会ホームページ/https://fij2020.jp

取材・文/安念美和子