堅実女子ニュース&まとめ 台湾映画『1秒先の彼女』はキュートなラブコメ、を超えた奥行のめちゃハッピー!な作品

郵便局の窓口で働くヒロインが、失われた一日を探そうとするところから始まる台湾映画『1秒先の彼女』。予想できない展開にあれよあれよで導かれ、なんともいえない幸福感に満ちた境地にたどり着く。監督は90年代に『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』を放ち、一部に熱狂的ファンを持つチェン・ユーシュンだけに、全然まったく、一筋縄ではいきません!

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『1秒先の彼女』
(配給:ビターズ・エンド)●監督・脚本:チェン・ユーシュン ●出演:リウ・グァンティン、リー・ペイユー、ダンカン・チョウほか ●2021年6月25日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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【Story】
郵便局の窓口で働くアラサーのヤン・シャオチー(リー・ペイユー)は、幼いころからなにをするにもワンテンポ早い、ちょっとズレた女の子。仕事帰りの公園で、ダンスを教えるリウ(ダンカン・チョウ)と出会い、映画に誘われて有頂天に。さらにデートの約束をした旧暦7月7日の「七夕情人節(チャイニーズ・バレンタインデー)」の朝。バスに乗り込んだところまでは覚えていたが、目を覚ますと日付は翌朝。日焼けで顔や腕が真っ赤になった状態で自宅のベッドの上にいた……。

やたらと親近感の湧くヒロイン像

納得いかなそうな様子で、無防備に日に焼いてしまったらしい赤ら顔で交番へ駆け込むヤン・シャオチー。
「失くしモノをしました、昨日です。バレンタインデーだった一日よ!」

台湾には西暦2月14日(西洋情人節)と旧暦7月7日(七夕情人節)の年に2回、バレンタインデーがあるとか。その後者の翌日、出会ったばかりの彼とのデートのはずだったのに、き~! みたいになってるシャオチー。いったいどういうこと? そこからまずは、はてなで頭がいっぱいのこの映画のヒロインが、どんな女の子かが語られます。

「私はなにをするにも早い」とシャオチー。幼少期には、みんなで機関車の振り付けを踊っていても、自分だけ新幹線になってしまう。よーいドンをすればフライング、長縄跳びを回そうにも早過ぎてもうひとりとタイミングが合わない。大人になってからも写真撮影ではシャッター音の前に満足して目を閉じてしまい、目をつぶった写真ばっかり。

つまりはちょっと人とはズレていて、どこかせかせかとした空気をまといつつ、男子ウケ抜群の美人な同僚を横目に、「能力よりスタイルが勝つのね」とか言いながら、もくもくと郵便局の窓口業務をこなす。それがシャオチーです。それでいてときどき「自分を愛そう、誰にも愛されないから」なんて言葉を思い出して、必死に前を向こうとします。

なんて親近感の湧くアラサー女子でしょう。演じるリー・ペイユーのスキニーで、どこか庶民的な見た目もあって、誰もがきっと感情移入するはずです。一方でシャオチーは、なんだか子どもみたいな人でもあります。独身で彼氏もいなくて一人暮らしで地味な仕事をしていてレギュラーでつるむ女友達がいるわけでもなさそうなのに、悲壮感というものがない。

ある日、公園で出会ったハンサムで胸板の厚いマッチョくん(演じるのは元プロのウィンドサーファー!というダンカン・チョウ)から映画デートに誘われ、うひょ~! という感じで自宅に帰り、いつものラジオ番組を流しながらハンディファンをマイクに見立ててシャウト! みたいな。それ、やるよね~。一人暮らしあるあるにヒザを打ってクスリと笑えます。でもそんな彼女にはある日突然、姿をくらました父親がいました……。

とここまで書くと、悲しい過去を抱えながら明るく生きていたアラサー女子の、ちょっとコミカルなラブストーリー? と思うかも。

でもこの映画、そう単純なお話ではありません。これはほんの、さわりのさわりです。その後にはものすご~く凝った構成でシャレた映画的ミラクルが続出します。しかもそれがただ、凝っていることを目的にしただけの空回り映画ではありません。それだからこそ描けた実に奥深い、それでいてやたらとハッピー気分になれる映画なのです。 

ヤン・シャオチーは公園で、ハンサムなリウと出会うが……。
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