人を褒めることは一見ハードルが高いように感じます。しかし、褒めることのメリットはたくさんあります。人を褒めることの効果や褒め方のコツ、テクニックや人を褒める習慣を身に付け、人間関係をよりよいものに変えていきましょう。
人を褒めることで自分も幸せになる

褒めることは相手だけでなく、自分にもポジティブな影響があります。具体的なメリットを確認しましょう。
人間関係が円滑になる
人は、いつもポジティブな言葉をかけてくれたり、「○○さんはすごいね」と褒めてくれたりする相手に対して好印象を抱きやすく、信頼感も高まる傾向があります。
褒めることを習慣にできれば、自分によい印象を抱く人を増やすことにつながり、人間関係は円滑になっていくでしょう。
しかし、ただやみくもに褒めればよいわけではありません。相手が「それは違うだろう」「適当に言ってるのかな」と思うような的外れなことを褒めたり、上から目線に聞こえてしまう褒め方をしたりすることはNGです。
きちんと相手と対話を重ねた上で、心から「すてきだな」と感じた点を褒めましょう。
褒めた相手の自信につながる
人は誰かに少し褒められるだけでも「自分のことを否定されていない」「認めてもらえている」という安心から、自己肯定感が上がったり、自信を持てたりするのです。
自信が付けば、仕事やプライベートなどあらゆる場面で積極的になることができ、失敗を恐れにくくなります。
大事なポイントは、相手のすてきだと思う点を繰り返し、さりげなく褒めることです。自分に自信がない人の場合、一度や二度褒めても信じ切れない場合もあるのです。
ただし、繰り返しを重視するあまり、誰にでもできて当たり前のことを褒めてしまうと信用性が乏しく、かえって自信をなくすきっかけになる場合もあるため注意しましょう。
褒めるテクニック「ピグマリオン効果」

褒めるときに役立つテクニックの一つに、ピグマリオン効果があります。どういったものなのか解説していきます。
ピグマリオン効果の概要
ピグマリオン効果とは「人は相手に期待されると期待通りの人間になろうとする」というものです。
もともとは教育現場で使われていたテクニックでした。近年では、ビジネスの場面でも活用されています。特に、上司が部下をマネジメントするときに利用すると効果的です。
たとえば、上司が部下に対しピグマリオン効果を使いたい場合は、部下に過剰なフォローや指示を与えすぎるのではなく、ある程度裁量を持たせるのもよい方法でしょう。
実践する場合は、「あなたに期待しています」というメッセージは明確に伝えつつ、部下の行動や判断を見守り、必要に応じて手を差し伸べましょう。
褒めて期待を伝えることがコツ
上司が部下に「期待している」ことを日常的に伝えることで、部下のモチベーションを高め、やる気を引き出すことができます。また、部下の行動がこれまで以上に積極的になり、報連相をしっかりと行ってくれることもあるでしょう。
ピグマリオン効果を活用するときは、期待していることを明確に伝えるために、態度だけでなくしっかりと言葉で伝える必要があります。
実際に褒めるときは、仕事の結果だけでなく、過程にもプラスな面が見られたら褒めるようにしましょう。また、過程全てでなくとも、過程の一部分を褒めることもおすすめです。
なかなか結果が出ずにモチベーションが下がっている部下の、モチベーションアップにもつながります。
過剰な期待や大げさに褒める行為は避ける
相手に対して、大げさな褒め方をしすぎると、「今の状態でいいんだ」と勘違いし満足してしまう可能性もあります。
その結果、業務を遂行する上で必要な努力を怠るようになってしまったり、過剰な期待を負担に感じて不安やプレッシャーを感じてしまったりすることにつながるでしょう。
まずは業務を任せるとしても、相手に合った量・業務内容を与えないといけません。過剰な期待から、その人のキャパオーバーになる業務や、頑張ったとしても到底達成できないような業務を与えないよう注意しましょう。
褒めるテクニック「ウィンザー効果」

ウィンザー効果を使うと、ただ何気なく褒めるよりもより効果的に褒めることができます。人間関係をプラスに転じたいと思ったらぜひ実践してみましょう。
ウィンザー効果の概要
ウィンザー効果とは、第三者から聞いた褒め言葉は、直接伝えられるよりも信じやすいという心理効果です。損得勘定抜きの人から発せられる言葉だからこそ効果があります。お店や商品の「口コミ」「レビュー」などが挙げられます。
例えば、とある店が「うちの店はサービスがウリです」と言っても、言われた側は「その店にとって利益になるから言っているのでは」という疑問が残り、信頼度に欠けてしまいます。
一方、その店にとって第三者である友達や知人から「あの店はとてもサービスがいいよ」と言われると信頼度が増します。このように、第三者からの褒め言葉のほうがより一層信じやすいというのがウィンザー効果です。
第三者の意見として褒めるのがコツ
いざ相手を褒めようとして、プライベートでは実践しやすいけれど職場ではどう褒めたらいいか分からないケースもあるでしょう。
そんなときは「第三者の意見」として褒めるのがおすすめです。たとえば上司と会話で同僚の働きぶりを褒めていたとします。その話を「上司が○○さんのこと褒めていたよ」と本人に伝えると、さり気ない会話の流れで褒めることができます。
さらに、同僚に話して喜んでいたことを上司に伝えれば、上司もうれしい気持ちになります。そして、自分も「よい話を伝えてくれた」と同僚と上司からポジティブな印象を持たれます。
このように、自分と職場の人の関係だけでなく、職場の人同士の関係にもプラスな影響を与えることができます。
褒める効果は自分にもあらわれる!

褒めることで、自分自身の気分や人間関係もよくなっていきます。具体的にどういった点でメリットがあるのか解説していきます。
人を褒めることでポジティブに
褒められた相手はもちろんうれしい気持ちになりますが、褒めた自分にもメリットがあります。
人を褒めて相手の心に幸福感を与えると同時に、自分自身も信頼されたり感謝の言葉をもらったりすることで、褒めた自分もうれしくなりポジティブになれます。
さらに、うれしい気持ちになった自分のプラスの雰囲気が、周りの雰囲気をよりよくしていきます。そして、自分もその雰囲気の中にいることで、気分が明るくなれるという好循環が生まれます。
人の短所ではなく長所を見られるようになる
褒めることを意識していると、相手の短所でなく長所を見ることができるようになります。さらに、人の長所を探すことで、自分の長所を見つける能力も身に付いてくるという利点もあります。
相手の長所を探すようになれば、苦手な人がいたとしてもその人のよい面も見つけられます。
そのため、苦手の度合いが小さくなり、人間関係が楽になります。長所が探しても見つけられないという人もいるでしょう。
しかし、目を見てあいさつをする、字がきれいであるといった、他の人にもありそうな長所で構いません。ぜひ長所を見つけて褒めていきましょう。
好意をお返ししてもらえる
好意を持ってくれている相手には敵対しようとは思わず、好意で返そうと思う心理のことを、返報性の法則と呼びます。
たとえば、試食したら買わないと申し訳ない気持ちになったり、丁寧な接客をされたときに何か買ってあげたくなったりするシーンなどが挙げられます。
褒めることにもこの法則が働きます。相手が褒めてくれたら、こちらも褒めたり何かしてあげたいという気持ちになります。そうすると、周りの人と敵対する可能性も低くなり、自分の味方になってくれる人も増えていくはずです。
褒め上手になる方法

以下の3点に気を付けると、褒めるのが得意でない人も、褒め上手に近づけるので実践してみてください。
褒め慣れていない人はまずは質問形式から
褒め慣れていない人は、褒め方がぎこちなくなってしまう心配があるかと思います。その場合は、質問形式で褒めてみるのがおすすめです。
「どうやったらそんなにうまくプレゼンできるのですか?」といった質問をしてみましょう。
普通に褒める場合、褒めてお礼を言われて会話が終了してしまうこともあります。しかし、質問形式であれば質問に答えてもらいコミュニケーションを図ることができます。
相手が褒められ慣れていないという場合も、質問形式なら間接的な褒め方なので、相手に受け入れてもらいやすいです。
具体的なポイントを押さえて褒める
褒めるときは、相手のどこがよいと思ったのか、どうしてすてきだと思ったのか、具体的な言葉を付け足してみましょう。相手は「本当に自分のことを見てくれているんだな」と感じ、お世辞ではなく本心から褒めていることがきちんと伝わります。
たとえば、「いつも頼んでるあの仕事の処理が早くて正確なおかげで、こちらの仕事も早く終われてすごく助かってるよ」などと伝えるのがよいでしょう。
このとき、誰かと比較して褒めるのではなく、相手の行動や素質だけにフォーカスをあて、ストレートな言葉で褒めるのがポイントです。
他人が気づかないような一面を褒める
人は褒められ慣れている部分を褒められても、新鮮味を感じない場合もあります。一方、本人や周囲の人がすぐに気づかないような意外な一面を褒められると、「自分のことをよく見てくれているんだな」と思って喜んでくれます。
また、相手がコンプレックスに思っているところも、ポジティブに見れば長所になり、褒める対象になります。
たとえば、自分のことを「流されやすい性格」だと思っている人に対して、「周りに気を遣える性格だね」と褒めることができます。相手のことをよく見て、日常的に対話を行いながら、積極的に長所を褒めてみましょう。
まとめ
人を褒めるのが苦手な人が、いきなり「褒める」を実践しようとすると勇気がいります。しかし、まずは質問形式で褒めてみたり、相手のよいところを具体的に言語化したりなど、コツをつかめば自分にとってもポジティブな効果が生まれます。
積極的に周りの人を褒める習慣を付けて、これまで以上にすてきな人間関係を築いていきましょう。