お花のある空間っていいですよね。生花は空間を華やかにし、豊かな気分にしてくれます。筆者は行ったことはないのですが、高級なクラブなどでは常にたくさんの高級なお花が飾られ、まだ新鮮なのに捨ててしまうことも多いのだそう。店舗自体に飾るお花や、ホステスさんが貰うお花、イベントなどではさらにたくさんのお花が届くため、いつも花束で溢れかえっているとのこと。今回は、そんな高級クラブでボーイとして働いていた男性が遭遇した、花束にまつわる思いがけない出来事をご紹介します。
お花に囲まれた生活
サトウくん(28)は、とある高級クラブでボーイとして働いていました(コロナ禍前の話です)。クラブの店内は、常に高級な生花で飾られており、閉店時にはまだ新鮮なお花が捨てられることもあったとのこと。
「ホステスさんたちが、好きなお花を持って帰ったりはしているのですが、それでも次から次へと花束やスタンド花などを貰うため、常にお花が余っていました。もったいないな〜と思って、僕も頻繁に貰って帰っていたんです」
高級クラブで働いていた頃は、サトウくんのお部屋は、常にお花が絶えなかったそう。
なぜか増える花束
ある日、いつものように花束を抱えて帰路に着いたサトウくん。
「いつも帰り道に路地裏の電柱の横で一服してから帰るのですが、その日は普段よりも疲れていたせいか、その“一服スポット”に、花束をうっかり置き忘れてしまったんです」
家に帰ってから置き忘れたことを思い出したサトウくん。翌々日の出勤の時に「もうないかもな」と思いつつ、一応、いつもの“一服スポット”に花束を取りに行ったとのこと。すると、不思議なことが起こっていました。
「そこには僕が忘れていった花束の他に、誰かの花束も寄り添って置いてあったんです。そこら辺はクラブ街でしたから、花束を持ち帰る人も多いし、そんな中の誰かが置いたのか、忘れたのかしたんでしょうけど…」
自分が置き忘れた花束を回収する予定だったサトウくん。しかし、出勤前でまだ人通りが多く、「道に供えてある花束を持ち去るヤバい人」に見られることを懸念し、悩んだものの、とりあえずそのまま出勤したのだそう。
いつのまにかお供えスポット化
その日、サトウくんは顔馴染みのお客さまの、閉店後のアフターに付き合うことになり、いつもの“一服スポット”には寄らずに帰宅します。そして数日後…
「気になっていたので、また出勤前に、“一服スポット”を通りかかってみたんです」
すると、そこには驚きの光景が…
「そこには新しい花束が飾られて、缶コーヒーまで置かれていました。つまり、いつのまにか、誰かがお供えをしていく場所となってしまっていたんです」
サトウくんの“一服スポット”は、その場所で何も起こっていないにも関わらず、お供物が置かれる場所へと変化してしまったのだそう。
“一服スポット”がひとり歩き
それからも気になって、仕事の日はその場所をチェックしに行っていたサトウくん。
「それ以降そこはいつでも何か置かれているような場所になってしまいました。もうそこで一服するのは難しくなってしまいました…」
しばらくして、サトウくんはそのクラブを辞めてしまったため、今はどうなっているか分からないとのこと…。
「僕の、ただの“一服スポット”だった場所が、ひとり歩きしてストーリーを持って、違う意味を持った場所に変化する様を見るのは、不思議な気持ちでした…。ずっとそこに立って『これは違うんです!』って、道行く人に説明するわけにもいかないですし…」

サトウくんのお話のように、“ひとり歩き”している物って、意外とあるのかも知れませんね。そのようなくり返しで、歴史的スポットになった場所も、実はあるのかも…と想像してしまいました。