堅実女子ニュース&まとめ 【東京深夜0時、結婚しない女】「幸せはお金で買える」海外ブランド社員・麻衣~その2~

東京に住む、結婚しない女性の物語。今回は、海外ブランドの正社員で、百貨店で販売員をしている36歳の麻衣。美人でモテる彼女が結婚しない理由、生活感への嫌悪があるから…….。

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会計を済ましてスーパーを出ると、スマホが震えた。「今終わった。そっちに行く」という圭介からのLINEだ。そのそっけない文字を見ていると、麻衣の体の奥がカッとして、熱くなってくる。その熱を抱えたまま、足早に歩き出した。

麻衣がマンションのエントランスに着くのと、圭介を乗せたタクシーが到着するのは同じだった。ベースボールキャップをかぶった圭介は、麻衣とは他人のようなふりをしながら、建物に入る。彼のジャケットはグッチのライダースの新作だ。エレベーターの10階のボタンを押す麻衣の右の薬指には、彼から送られたブシュロンの指輪が輝いている。

カッシーナで買ったフロスのランプは、暗闇を温かく照らす。圭介はリビングに入ると、コルビジュのソファに身を横たえ、靴下を脱ぐ。そんな姿に麻衣は気持ちが少し冷めるのを感じる。「最近、俺レベルの俳優でも、“不倫に気を付けろ”って言われるんだよ。まあ、週刊誌が俺たちのことを書いても、誰も興味ないか……でもさ、麻衣の会社って超有名じゃん? それが出ちゃうとやっぱ、ヤバいよな。それにしても相変わらず生活感がねー家だな。なんかおしゃれ雑誌みたい。落ち着かなくないの?」と笑いながら、起き上がりシャンパンを開けようとしている。

バカラのフルートグラスをすすめたが、圭介はつかつかとキッチンに入り、食器棚を開ける。迷うことなく麻衣が上京したときから使っているやや黄ばんだデュラレックスのグラスを手に取り、その場でシャンパンを注いで飲み始めている。モノに執着がない麻衣が、唯一捨てられない古ぼけたグラスに圭介が唇をつけるのを見ると、大切な宝物を共有したような気がして、心が安らぐ。

麻衣はキッチンで手早くブロッコリーを蒸し、ロイヤルコペンハーゲンの白の皿に盛り付け、パルミジャーノチーズとブラックペッパーを削りかけて出した。皿を受け取るとき、圭介の上腕二頭筋が膨らみ、美しい筋が入る。麻衣はこの鍛えられた腕が好きだ。無造作に見えて、手入れをされているあごひげの輪郭から、シャンパンを飲み、上下するのどぼとけの動きに見入ってしまう。

盛り上がる気持ちを抑える理由とは?

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