かつては、自分の時間が欲しい、自由な時間を謳歌したいと言う女性たちに支持された派遣と言う働き方。今回は、都内で派遣社員をしている小橋真紀さん(仮名・28歳)にお話を伺いました。
広島県の都市部で生まれた真紀さん。幼いころに父を亡くしている彼女は、母のほかに、母の再婚相手である理学療法士の父と、父親が違う7歳年が離れた弟と、10歳下の妹の5人家族で育ちました。地元の中高を卒業後、歯科助手の資格が取れる専門学校に進学。地元で数店舗ある歯科医院に就職します。しかし、小説家になるという夢が諦めきれず、上京して、歯科医院で働き始めます。
小説家になりたいという夢を公にすることで、嫌な思いを何度もしました。
「“なんで上京してきたの?” って聞かれて、最初のうちは正直に“小説家になるため”って言っていたんですよ。そうしたら、真顔で“マジ?ウケるんだけど”って笑ってきた女性がいて。“大学も出てないのに無理だよ”っていうのも、よく言われましたね」
上京前と実際に暮らすようになってからは、東京のイメージが変わったと言います。
「実際に打ち合わせとか作品の持ち込みとかするなら、広島にいるよりも東京の方がチャンスが多いように思ったんですよ。バーで働いたのも、出版社の人とかが、もしかしたら来るんじゃないかなって思っていたのもあって。でも結局、何もありませんでしたね」
真紀さんは、小説を書き終わると文学賞に応募する生活を、この3年間続けています。
「この前応募した作品が、二次審査を通ったんですよ。絶対通ると思っていたので悔しいんですが。でも次、頑張ればなんとかなるんじゃないかなって」
ライター業ではなく、あくまで小説家(モノカキ)になりたいと言う彼女。
「ライターって、誰でもできるじゃないですか。でもモノカキって、その人にしか書けないから価値があるんですよ」
時間の融通が利き、時給も選べる医療事務の派遣会社に登録をします。
「たまたまネットで派遣会社を見つけて。医療事務は専門で勉強していたので、それならできそうって思ったんですよね」
PC操作が苦手な彼女にとって、アナログ主体の医療事務が楽だった。