堅実女子ニュース&まとめ 【東京深夜0時、結婚しない女】母の愛の呪縛からの脱出!?期待しないお見合いで運命の出会い……医療関連会社勤務・貴美子(32歳)~その1~

東京都の医師会の重鎮でもある父親と10歳年上の兄の威光で入社した貴美子に対し、誰もが一目置いていた。しかし、口が悪い同期入社の敏明は違った。“立派なオツボネだ”とか“若さと美貌への嫉妬だな”など軽口を叩いて来る。背が高く、笑顔にあどけなさが残る敏明に対し、かつて貴美子は密かな恋心を抱いていたが、30歳になる前に、クライアントである年上の女性医師と結婚し、今では子煩悩な2児の父になってしまった。
香奈が入社してから、敏明に年齢のことを揶揄される回数が増えた。そのたびに、「そんなことはないですよ」と笑顔でかわしてきた。女性への年齢差別をやりすごす方法は笑うことのみだ。正当に反論すれば自分がみじめになるだけだ。

貴美子はずっと優等生だった。入社以来、一度のミスもなく、正確に仕事をし、礼儀正しく、分をわきまえて行動してきた。その評価は、20代後半までの“女の子”の時代は高かったが、30歳を超え“オバサン”の時代になった今では、同じことをしていても、柔軟性がないとか、口うるさいなど陰で言われるようになる。そんな声を聞くたびに、背筋をスッと伸ばし、口角をキュッと上げて清楚に微笑んでやり過ごしてきた。

貴美子が会社を出ると19時になっていた。週末の東銀座の街は輝いており、立ち飲みやレストランには客が溢れていた。10年前に比べ、ひとりで行きやすいお店も増えたが、女の子ひとりで食事などするものではない、という親の教えもあり、レストランやバーはもちろん、喫茶店さえも立ち寄ったことはなかった。
混雑する都営地下鉄に乗り、席を確保した貴美子は、周囲の人のマナーの悪さにうんざりした。大きなリュックを背負う大学生、ゲーム音を盛大にイヤフォンから音漏れさせている若者、隣の席に座っている女子高校生はチョコレートを食べている……見たくないのについ見てしまうのだ。貴美子は両手をグッと握りしめ、自宅のある駅に着くまでの20分間、固く目を閉じていた。

母の期待や愛情に応えることが、生きがいになっている女性は少なくない。

運命の男と出会ったのはお見合いだった。医師との結婚をゴリ押しする母との葛藤の果てに見えた世界は?~その2~に続きます。

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