【東京深夜0時、結婚しない女】母の愛の呪縛からの脱出!?期待しないお見合いで運命の出会い……医療関連会社勤務・貴美子(32歳)~その2~

【東京深夜0時、結婚しない女】母の愛の呪縛からの脱出!?期待しないお見合いで運命の出会い……医療関連会社勤務・貴美子(32歳)~その2~

東京に生きる、結婚しない女性のストーリー。今回の主人公は、医療関連会社で働く、中村貴美子(32歳)。

 「貴美子ちゃん、お帰りなさい。今日はおばあちゃまからいただいた花咲ガニがあるわよ。早く着替えて食べちゃいなさい」と母親の靖子が追い立てるように言ってきた。あれを着なさい、これを習いなさい、この学校に行きなさい、ちゃんとしなさい、女の子らしく行儀良くしなさい……貴美子は母の言う通りに生きてきた。そうすれば間違いがないことが感覚的にわかっているからだ。

貴美子は7代続く医者の家に生まれた。先祖は将軍の脈をとっていた、というのが父の自慢だった。東京都大田区内の高台に壮大な本家があり、その近くに貴美子が生まれ育った家がある。田舎出身で、負けん気が強く、美貌を買われて嫁に来た元看護師の母は、婚家では一段も二段も下に見られており、バカにされないように、貴美子と妹の優美香を厳しくしつけた。

今でも覚えているのは、小学校2年生のときに父の実家である“おばあちゃま”の家に行ったときのことだ。紅茶が出てきたので、貴美子はティーカップだけを持ち上げて飲んでしまったのだ。その瞬間、祖母はあらあら、という表情を浮かべ、母の靖子は般若のような顔になった。ティーカップというのはソーサーごと持ち上げて、音を立てずに飲むことがマナーなのだ。家では以降、水、スープ、味噌汁など母から供される液体はティーカップに入れられた。カップを見れば反射的にソーサーが持てるまで、そのしつけは続いた。

部屋着に着替えていると、「何しているの?早く食べちゃいなさい」という母の声が聞こえ、リビングに急いで向かった。

「こんなことは言いたくないのだけれど、ねえ、そろそろ結婚しなさいよ。お見合いしても断るのだから、いい人とかいるでしょう?」と待ち構えていたかのように母・靖子は言った。貴美子の同級生に孫が生まれたことが、悔しくてならないのだろう。

こんなこと言いたくない、のならば言わなければいいと思いながら、それを口に出したら母は際限なく怒り出すことを知っている。

「あなたが働きたい気持ちもよくわかるわよ。でも、私はお勤めすることに、今でも反対。女の子が会社勤めなんてすると、可愛げがなくなっちゃうのよ。せっかく美人に産んであげたのに。女の子はね、結婚こそが幸せなの。ねえ、日曜日にパパとママのお友達の息子さんと会いなさい」

母は信念があり、頭の回転が早く、口がよく回る。何かを発言するとき、“私はあなたのことをわかっているのよ”という一言を忘れない。それが一層、貴美子の心を重くする。

両親の友人の息子と言えば医者だろう。代々、利権という結界で守られ、昔から家族で行っているなじみの店しか行かず、狭い世界で生きる傲慢で平和な男達。主張をせずとも安全圏で生きられる彼らと貴美子は、育った環境こそ似ているが歩み寄れるはずもなかった。

母の言葉を聞きながら、ゆでたてのカニの脚を折る。湯気と共に甘い香りが立つ。火入れの加減もすばらしく、みずみずしいカニの肉の旨さを引き出している。母は結婚してすぐに著名な料理研究家に弟子入りし、今でも定期的に通っている。婚家でバカにされたくない一心で。

お見合いの席に現れたのは、医師ではない男性だった。そのとき、貴美子の母は?

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