堅実女子ニュース&まとめ 【東京深夜0時、結婚しない女】自意識と劣等感の行方は?インスタグラマー・典子(36歳)~その2~

東京に生きる、結婚しない女性のストーリー。インスタグラマー・典子(36歳)。

19時30分にスタイリスト・佳津子はスタジオに入って来た。40歳という年齢を感じさせないスリムなボディー、立体的なカッティングの白ブラウスに、スリムなガウチョパンツを合わせ、手首には幅広のバングルをして、白いスニーカーを履いている。スタッフは何度も仕事しているのだろう。阿吽の呼吸が伝わってくる。

後片付けをしている典子の横を、ロケバスの男性が10枚ほどの服がかかったラックを搬入し、立ち去って行った。

佳津子は「はじめまして、スタイリストの佳津子です」と手短に言い、ラックの前に立ち、服を点検している。大切な赤ちゃんを扱うような手つきに、典子は見とれてしまった。

「最初はこの子でいこうかな。メイクはこのままでいいから、ヘアはハーフアップっぽくして。あ、麻理亜ちゃん!」

「佳津子さん、すみません。今日2コーデになっちゃったんですよ」

「いいよ、私物だから。あ、ヘアできた?いい感じにかわいい!じゃ、着替えよっか」

佳津子はモデルの着替えを手伝い、アクセサリーを付けて、袖を折り、クリップでシルエット整え、靴を履かせ、あっという間に2体の撮影が終わった。

典子が1時間半かけて行なったことを、佳津子はたった20分で完成させてしまった。プロの仕事を間近に見て、何をしていたのだろうかと、強烈な恥ずかしさに苦しくなった。フォロワー数で相手を見下し、自分は自信たっぷりなのに、そのくせ肝心なことになると評価が気になって優柔不断になる。

典子の極端な理想は、今、現実のものとなっている。その現実を支えているのは、飽きっぽいフォロワーと、典子に都合がいい誤解の積み重ねから生まれる自信だけなのだ。

佳津子はきっと、何十年も撮影現場をこなし、失敗や成功を血肉に変えた蓄積が仕事を支えている。仕事で深くかかわる人間がいないと、人は変われないのだ。

仕事にはゴールはない。結婚というゴールがないのに、恋愛を続ける意味はあるのだろうか……

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