ライフスタイル 大相撲ファン歴30年!いま夢中なのは力士ではなく、あの人です【教えて!楽しすぎる趣味の世界】

はじめての大相撲観戦で魅せられたのは力士ではなかった!

今から10年ほど前、 社会人になって3年目のときに美紀さんの人生を変える出来事が起きました。

休みを利用して東京に住む姉や友人に会いに行くことにした美紀さん。しかし、途中ひとりで過ごさねばならない日があったそうです。東京でしか見られないものや買えないものはたくさんあるし、一人で行動するのもたまにはいい。美紀さんは様々な情報を集めて検討し、その日の予定を決めたそうです。

「 大相撲の本場所チケットが取れたんです。うしろのほうの席だったのですが、一度は見てみたいと思っていたので、この機会を逃すまいとひとりで行きました」(美紀さん)

初の観戦日。美紀さんは朝早くから両国の国技館へ出かけました。大相撲中継は午後3時頃からですが、中継されないもっと下の階級の取り組みもあります。せっかくなら1日いて雰囲気を存分に味わいたいと考えたそうです。

「初めての大相撲観戦、それはそれは感動しました。ずっと拍手していた気がします。遠い席で見ていても迫力が伝わってくるし、場内の熱気もすごい。テレビとはやっぱり違いました。毎日通いたい…と本気で思いましたね。それからしばらくお風呂でも『ハッキヨイ』と行司さんの口マネをしたり、興奮がおさまらなかったんです」と語る美紀さん。

それ以降は場所ごとに遠征するようになりました。 近くの県に巡業が来た際はお母さまを連れて行くこともあったそうです。

「巡業では、引退して親方になったかたが気軽に握手をしてくれたりしてうれしかったです。こんなに素晴らしいものを見せてくれてありがとうという気持ちでした」(美紀さん)

そして観戦しているうちにあることに気がついたそう。

「大相撲を見ていて、もちろん取り組みの迫力がすごいし熱心に見ていたのですが、自分が力士ではなく、違う人たちを見ていることに気づいたんです。それが呼び出しさんたちでした」(美紀さん)

呼び出しとはテレビ中継でもたびたび登場する、背中にスポンサー企業のロゴなどを背負った裁着袴(たっつけばかま)姿の人たち。土俵を掃いたり、懸賞幕を掲げたりしている人といえばわかる人も多いでしょうか。「に~し~、ひが~し~」と対戦力士名を呼び上げるほか、懸賞幕の出し入れ、土俵作りなど専門性の高い仕事をしています。力士は大学生を経て22歳以降に入門する人も珍しくありませんが、呼び出しに志願できる年齢は19歳未満と定められています。テレビで見ていて若者が多いように感じられたらそのためだと思われます。

呼び出しは9階級に分かれており、たとえば「十両呼出し」という階級は勤続15年以上で成績優秀な人、「幕内呼出し」は勤続30年以上で成績優秀な人などの条件で昇進が決まります。力士とは別の修行の世界を持っているのです。

「全取り組みを中継しているネット番組を見てもらえばわかると思うのですが、朝の取り組みは観客がすごく少ない中、若い呼び出しさんが細い声で懸命に呼び出したり、オドオドした感じで土俵の整備をしています。その姿が健気で。縁の下の力持ちなんです。地味にこつこつと仕事をしている姿が自分とも重なったのかもしれませんね。いつのまにか力士よりも若い呼び出しさんに『がんばれー』と心で声援を送っている自分に気づいてしまいました」(美紀さん)

美紀さんの熱はさらに上がります。

「 お気に入りの呼び出しさんに差し入れを渡すようになりました。 相手は10歳くらい年下の子で、恋愛感情ではないんですが…。もう追っかけ状態ですね。私は大相撲が好きだけどミーハーではなかったので、よく言われる『スー女(相撲女子)』とは一線を画しているとずっと思っていましたが、もう否定できないところに来てしまいました」(美紀さん)

愛用している呼び出しさんのイラスト入りバッグ

今後、美紀さんの呼び出しファン生活はどうなっていくのか尋ねると「少しは控えないと」とはにかんで答えてくれました。

「呼び出しさんにも迷惑が掛かると思いますし、差し入れはやりすぎちゃったかなあと、ちょっと反省しています。しばらく続けたのでもう顔を覚えられてしまいましたが、改めて陰からこっそり見守りたいですね。大相撲観戦自体は、祖父が残してくれた宝物のようなものなので、これからも続けていくつもりです」(美紀さん)

「アンコ型の力士が好きなのだけは一貫して変わらないですね」という美紀さんのトートバッグ、よく見ると呼び出しさんのお仕事がイラスト化されてプリントされていました。

家のテレビから実地観戦、そして脇役への注目。変遷する美紀さんの大相撲ライフ、まだこの先も変化がありそうな予感に満ちています。

文/近藤とも

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