ライフスタイル のんびりした里山に点在する、キンキンの最先端アート。「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス 2020+」に行ってみた!

3年にいちど開かれるトリエンナーレ方式で実施、今年で3回目を迎えた「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス 2020+」。

コロナ禍で一年延期して現在、千葉県市原市の小湊鉄道を軸とした周辺エリアで開催しています。のどかな里山の日常と、観る者の意識を非日常へ飛ばす現代美術、その化学反応はいかに? 現地に向かいました。

レトロな小湊鉄道に乗って次々とアートに出会う

東京駅からバスに乗り、高速を利用して1時間20分ほど。うとうとするうち、あっという間に千葉県市原市の小湊鉄道五井駅に到着。

カフェスペースが併設された「こみなと待合室」(おしゃれ~)の前で、開会式が行われました。目の前にはトロッコ列車が横づけされ、参列者が着席して会場の一部になっています。このトロッコ列車がカワイイ! レトロなオレンジ色の車体で、窓はなくて吹きっさらし。

トロッコ列車。写真の左端にちらっと見えているのが、吹きっさらしの車両。通常、乗車には乗車券の他、トロッコ整理券が別途かかり、予約が必要。

開会式のあとはトロッコ列車にチラっと乗り(このアナログなガタゴト感!)、小湊鉄道に乗り換えて上総牛久駅へ向かいます。

各駅停車でのんびりと移動、い~感じにひなびた駅舎のホームに……宇宙飛行士? これがこの日、最初に目撃したアートでした。

レオニート・チシコフ氏による「村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら」という作品。彼は五井駅~馬立駅の7つの駅舎で、月を探して宇宙を旅する人の物語を表現したシリーズ作品を展開しています。

まさに、日常にやってきた非日常。けれど一般の乗客にとって、この猛烈な違和感をもたらす風景は既に見慣れたもののようで、もう誰も振り返ったりしません。その光景がさらに不思議。

その先の上総三又駅にはあったのは宇宙ロケット! 列車に乗ったまま鑑賞しましたが、全部をホームに降りて眺めたくなります。

上総牛久駅で下車、ここのトイレには展望台がついてます。階段のトイレ、緑があるトイレ、塔のトイレと個性いろいろ。これも「里山トイレ」という藤本壮介の作品です。なんだか気分が明るくなる~。

駅舎の前に置かれたベンチに座る、「村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら」。地元のおばちゃんが話しかけていたらしい…。
上総三又駅にある「三又宇宙基地」。裏側にはしごがあって、丸窓からの景色を眺められます。

小学校の画一的な教室が、独自の世界に深化

バスに乗り換え、旧平三小学校へ。
2016年に閉校した校舎の教室や廊下に、空間全体を含めて作品とする12のインスタレーションを展示しています。

校庭、玄関の靴箱、理科室や家庭科室、もちろん初めて訪れた学校ですが、どこか懐かしい気持ちに。1~3階までの教室に日本だけでなく、ブラジルやアメリカ、韓国のアーティストがそれぞれ独自の世界を展開。

ほとんど構造は同じはずの教室に一歩踏み入れると、それぞれの方向に深化したアーティストの感性がさく裂します。アートって楽しい~。

「誰もが先生、誰もが生徒」を合言葉にした「市原100人教頭先生 キョンキョン」という交流プログラムも。

栗真由美氏による「ビルズクラウド」。ミニチュアハウスで市原の町を再現。夕方、点在するおうちの明かりがともるのを眺めるような温かい気持ちに。

月崎駅前にある小湊鉄道の鉄道保線員の詰所小屋を使った「森ラジオ ステーション×森遊会」。テーマは“森との共存”。外壁は苔に覆われ、近くの森にマイクを設置し、そこから採取した音を小屋の中にライブで流しています。またうっすらとスモークがたかれ、天窓から光が差すと、森の中の木漏れ日のよう。ここは森の中なの? 不思議な時間が流れます。

森と人を繋ぐ、だから「森ラジオ」。

そして今回の最終目的地、「市原湖畔美術館」へ。現代アート中心の企画展と、版画家の深沢幸雄ら、地域ゆかりの作家の常設展を開催しています。

この美術館はまず建物が見どころ。既存建物の仕上げ材をはがし、スチールの折板を使用して改修したとか。格好いい~。目の前に芝生広場があって、静かな湖を見渡せて。せわしない都会時間はすっかり遠のき、贅沢な気分に浸れます。

高滝湖が目の前。

この日の企画展は「戸谷成雄 森――湖 再生と記憶」。チェーンソーで木を彫り刻んで制作するという作品は、目の前で対峙すると異様な迫力です。

森の中に捨て置かれたようでなんだか恐くなったり、木漏れ日の光が飛び交うのを目で追うような愉快な気分になったり、墓場で生や死そのものを目の前にでん!と置かれたようだったり。妙に哲学的な気分になります。作品を観るだけで、ずっしりとした充実感。

戸谷成雄の「視線体―散」。

ここで紹介したのは「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス 2020+」の中でもほんのほんの一部。とても一日では回り切れません。けれどほんの一部であっても日常を遠く離れたリラックスした気分と、先端のアートに触れることでしかもたらされない内面の充実が味わえます。乗り鉄、撮り鉄だってきっと満足!

「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス 2020+」
開催期間:~2021年12月26日(日)※月・火は休場
鑑賞時間:10:00~16:00(一部を除く)
開催エリア:千葉県市原市小湊鉄道を軸とした周辺エリア
五井、牛久、高滝、平三、里見、月崎・田淵、月出、白鳥、養老渓谷
料金/一般 3000円、大高生 1500円、小中学生 500円(作品鑑賞パスポート/当日券)
(問)いちはらアート×ミックス実行委員会事務局 0436-50-1160(8:00~19:00)
URL/ichihara-artmix.jp

※開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

取材・文/浅見祥子