人生やキャリアの不安を「学び」で埋めようとする女性は少なくありません。今回お話を伺った咲綾さん(33歳)もその一人。都内のIT関連会社に勤務しながら社会人大学院に通学して1年以上が経過しましたが、「年間200万円の学費はムダだったのではないか」と感じ始めたそう。
マウント男性や昭和オジサン…人脈を作るために入学する人も多い
咲綾さんが入学した社会人大学院は、平日は夕方から開講し、土曜日にも授業を行う。
「そもそも、コロナ禍のリモート授業なので、予想以上に“意味がない”感じはありました。画面上でディスカッションといっても、“は?”という感じで。たまにスクーリングがあるのですが、あまりにも間隔が空くので、毎回“はじめまして”状態。人脈作りには全くつながりませんし、学んだことに対する出口がありません」
出口がないというのは、咲綾さんが決定権のない平社員だから。授業のディスカッションでは、経営者の立場で決断することを求められるが、咲綾さんの仕事の立場では、まったくの想像の世界でしかない。
「私のクラスには20~60代くらいまでの多様な経験を持つ人がいて、肩書も私のような一般社員から経営者までいます。異なる視点や考え方などに気付いたのはよかったです。私はデジタルマーケティングの仕事をしているのですが、仕事で直面している問題を解決するスピードは上がったと思います。図で解説する能力も身につきましたしね」
社会人大学は人脈づくりもひとつの魅力とされているけれど、コロナ禍ではそれも難しい。
「コロナの合間を縫って、5~6人程度の飲み会をしたのですが、マウントをとってくる同世代男性と、昭和の価値観を持っている意識高い系オジサンに、無料ホステスをしてしまった感じです。女性は3人参加したのですが、1人は元子役だったというめっちゃ明るくてハキハキした経営者で、もう一人はグローバルな生活資材会社に勤務しながら、SDGs活動をしており“仕事も学びも遊びも全力を尽くしています”という同世代でした。2人に対してはマウント男性も昭和オジサンも“SNSでつながりましょう”と友達申請していました。結局、社会人大学院は学びの他に人脈づくりの側面が大きいですから」
友達申請は、咲綾さんにはされなかった。
「話題が移ってしまいましたから。その直後に、久しぶりに会社の同期会が行われたのですが、この時はホントにヤバかったです。同期の能力の高さ、仕事への真剣度がハンパなかった。私が社会人大学院に行っていることを心から応援してくれていることもわかりました。
総務にいる子の“Web3.0とメタバースって何が違うの?” を皮切りに、開発やマーケの子からは“X世代の子たちって、何を考えているのか”、“メタバース空間でのマーケティングはどうなるのか”、“今、フォトグラメトリーとブレンダーでサービスを立ち上げたいと思っていてさ…”などの質問をされました。でも、まったく答えられないんですよ。同期達が私を傷つけないように、話題を移行させてくれてホッとしましたけれど」
勉強より大切なことがあるが、自分にはその才能がないと気づく