石川県の観光タクシー「加賀の國 観光グランキャブ」を利用した2泊3日の旅「加賀の國RICH体験ツアー」。今回は加賀市を紹介します。
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2023年度末の北陸新幹線の金沢~敦賀駅間開業でアクセスがより便利になる加賀市
北陸新幹線は1997年に高崎から長野まで117kmが、2015年には長野から金沢までの240kmが開業しました。2023年度末には金沢から敦賀間の125kmが開業する予定です。北陸新幹線の延伸による「加賀温泉駅」の誕生で、アクセスがより便利になるのが、石川県南西部に位置する加賀市。九谷焼、山中漆器といった伝統工芸が盛んで、3つの温泉を有する加賀温泉郷も有名です。
かが 幡亭
加賀料理でズワイガニと並ぶ冬の名物が野生の鴨。飛ぶ鳥を網で捕らえる古式猟法「坂網猟」や、罠をしかけて捕獲する天然鴨があります。北陸の味覚をふんだんに使った加賀料理を提供する「かが 幡亭」でも、冬のおすすめといえば鴨料理です。
「かが 幡亭」のある加賀市大聖寺は、古くから鴨のつがいを結婚式の引き出物に使っており、数百年に渡って鴨の食文化が伝えられてきました。野生の鴨猟は冬の3か月に限定され、年間200羽前後しか採れない貴重な食材です。
「かが 幡亭」は野生の鴨を扱う数少ない店舗で、冬季限定の鴨一式料理として、「坂網鴨コース」(9900円~)、「天然鴨コース」(7700円~)を提供しています。
「お昼膳」にも、罠で獲った自然鴨を使った「鴨治部煮膳」(2750円)があります。治部煮は加賀料理の代表格で、鴨肉、麸、里芋、しいたけなどを甘い醤油味の汁で煮込み、小麦粉と片栗粉でとろみをつけた汁とともに椀に盛りつけ、わさびを添えたものです。
「かが 幡亭」では県外からのお客様に治部煮の良さを分かりやすく伝えたいと、市販されているお椀で一番大きいものを使っています。
鴨は炊きすぎると固くなってしまうので、火の入れ具合にはこだわっており、野生の鴨とは思えないほど臭みがなくやわらか。甘くとろりとした汁もおいしく、鮮やかな赤色の鴨肉と共に存分に加賀の味を堪能できました。
素材の味をダイレクトに味わえる「鴨串焼き」(660円)もおすすめ。むね肉は少し歯ごたえがありますがパサついていないので食べやすく、レバーのような濃厚な味を感じます。もも肉は噛むほどに脂の旨味があふれ出しとてもジューシー。やわらかく炊いた治部煮の鴨肉とはまた異なる食感で、野趣あふれるおいしさでした。
加賀棒茶 丸八製茶場
加賀のブランドほうじ茶として知られる「加賀棒茶」。「加賀棒茶」を製造・販売している「丸八製茶場」では、喫茶、ギャラリー、物販のある直営店「実生(みしょう)」や、焙煎工場の見学もできます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
山代温泉 古総湯&総湯
山代温泉にある「総湯」は江戸時代中期から続く共同浴場で地元の人たちの憩いの場。総湯を中心に旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪(ゆのがわ)」という街並みが今も残されています。総湯は何度も建て替えられてきましたが、現在の「古総湯」は明治時代の総湯を2010年に復元したものです。
古総湯は厳選かけ流し。昔ながらの入浴だけができる施設で、洗い場はなくせっけん、シャンプーの使用は不可。浴室タイルは地元作家が手書きで製作した九谷焼を使い、当時の絵柄や様式を忠実に再現。当時、最先端だったステンドグラスも浴場に使われています。
2階は風通しの良い畳敷きの休憩所になっており、お風呂上りに外の景色を見ながら休むこともできます。
古総湯の向かいにある「総湯」は2009年に建て替えられ、共同浴場としての総湯を受け継いでいます。加水無しの100%源泉で、地元の人たちが銭湯として利用しており、こちらは洗い場も設置されています。壁面には加賀九谷陶磁器協同組合の作家30名による手描きの九谷焼タイルが使われています。吹き抜けの天井には大きな天窓があり、明るい日の光を浴びながらゆったりと湯あみを楽しむことができます。
休憩コーナーには地元のおいしいものを集めた売店があります。名物は「温泉たまご」(白玉75円、赤玉90円)。63℃の芒硝泉の源泉かけ流しの中に約8時間浸けた玉子で、白身はとろり、黄身はほどよく固まり、温泉成分がしみこんだおいしい温泉玉子です。
ギャラリー&ビストロ べんがらや
山代温泉にある「べんがらや」は、食事やカフェのほか、加賀在住の作家の作品も展示販売しています。加賀の気候に合わせて特別に焙煎したコーヒーをサイフォンで淹れる「加賀サイフォンコーヒー」(550円)は、コクのある濃厚な味わいです。
加賀の食材を使ったおもてなし喫茶メニュー「加賀パフェ」は、加賀市内6店舗で提供しており、価格は970円で統一。べんがやらはそのひとつで「加賀のフレッシュ野菜パフェ」を提供しています。
加賀野菜のサラダ、胡麻豆腐や大根のシロップ漬けなど旅館の会席料理に見立て、体にやさしい素材を集めたヘルシーなパフェです。
「加賀のフレッシュ野菜パフェ」の構成は以下の通り。パフェとして食べたことのない素材の組み合わせで、食べてみないと実感できない味わい。山代温泉に来た時にはマストで食べたい一品です。
画像左:①甘酒とコーヒーを使ったゼリー。②抹茶のホイップクリーム。③棒茶とゆずの2種のシフォンケーキ。④米を使った地元「幸徳園」のポン菓子。⑤細かく刻んだ大根のシロップ漬け。⑥炭酸入りグレープジュースを凍らせてクラッシュしたもの。
画像右:⑦しょうゆバニラアイス、かぼちゃアイス、ブロッコリーアイス。⑧皮をむいてシロップ漬けにしたプチトマト。⑨きな粉をまぶした胡麻豆腐。⑩車麩にコーンフレークをまぶし揚げたもの。⑪加賀野菜~レタス、紅芯大根、にんじん。玉子の黄身と酢を和えた黄身酢はサラダと一緒に。⑫海苔に溶かしたチーズをのせ焼いて乾かし、海老のパウダーとこしょうで味付けした海苔チーズ焼き。
御菓子処 しもつね
「べんがらや」の真向かいにあるのが明治33年(1900年)に創業の和菓子店「しもつね」。山城温泉の鉄道馬車の駅前で、乗客に酒や餅、饅頭を出していたのが店の始まり。温泉水を使った溶けないアイス「くずバー」も人気で、山代温泉のお風呂あがりのお客さんが買いに来ることも。
昔ながらの配合で作っている「おはぎ」と「豆大福」(各120円)が看板商品。取材で訪れたパンツェッタ・ジローラモさんも「このおはぎなら何個でも食べられる」と大のお気に入りになったそうです。おはぎも豆大福も甘さ抑え気味で塩味もほどよくさっぱりしていて、確かに何個でも食べられそう!
山代温泉のシンボル「やたがらす」をイメージした饅頭「烏(からす)のゆかり」(120円)は、生地には黒胡麻、中の白あんには白胡麻が入った、胡麻の香りが芳ばしい和菓子。柚子を練りこんだふくさ生地にあんを挟んだ「柚子ふくさ」(130円)も、柚子好きにはたまらない一品です。
山代温泉名物「惣八 六法焼」に対抗(?)した、六角形に上下を足した「八方焼」(130円)は、二種の皮で二種のあんを包むという手の込んだ和菓子です。
葉渡莉
古総湯から徒歩で5分ほど、山代温泉の温泉通り商店街に位置する旅館「葉渡莉」。格子造りの情緒を感じる外観で、館内は生花やアートで彩られ女性にも人気の宿です。
大浴場「九萬坊の湯」は、随所に檜が使われており露天風呂も併設。雪見をしながら入る檜造りの露天風呂では格別でした。もう一つの大浴場「お薬師の湯」は石造りで、ジャクジーもあり、ゆったりと温泉が楽しめます。

農産物直売所 元気村
JA加賀が運営しているファーマーズマーケット。加賀九谷野菜など地元の農産物、地域の特性を活かした6次化商品などを扱っています。雪の時期は露地物で出荷できるものは数が限られており並ぶ商品も少ない状態でしたが、7~9月が農産物の最盛期で、この時期に訪れた際はぜひ立ち寄りたいスポットです。
スーパーフードとして注目されている「ヤーコン」を発見!ヤーコンは南米原産の野菜で、生でも加熱しても食べられます。ヤーコンに含まれる「フラクトオリゴ糖」は自然由来の糖質で、カロリーは砂糖の半分。大腸内のビフィズス菌の餌になり、善玉菌を増やし整腸作用があることから、ダイエット効果も期待できます。
野菜以外にも肉、魚、パン、菓子など地元のおいしいものを取り揃えています。総湯の売店でも見かけた「カワギシベーカリー」のパンも。昔ながらのコッペパンや豆パンなど、パッケージも含めてなつかしい雰囲気のパンです。
加賀パフェのシロップにも使われていた「吸坂飴」は、加賀で360年の伝統を受け継ぐ、米と麦を使った飴菓子。オブラートに包まれていて、キャラメルのようにやわらかくやさしい甘さ。価格も手ごろなので、おみやげにもおすすめです。
文/阿部純子