ライフスタイル 葬式でもふざける「からかい癖」がある婚約者。別れたくないが受け入れられない【法律相談】安原詩織さん(仮名・35歳・公務員)

自分にとって“嫌なことをする男性”に拒否の意思を伝えたとして、そのことで別れたくはない前提とのことでありますが、よく考えていただきたいのは、“この男性が好きで結婚したい”のか、それとも“結婚というものをしたい”のかということです。

後者ならば、自分にとって嫌なことをする相手の行為にガマンしたり、嫌な要求を聞いて結婚したところで、あなたは幸せになれるのでしょうか。

もっとも、あなたのご質問の趣旨は、結果として破談になれば、慰謝料を請求できるかという点にあるようです。

ご指摘のような行為を拒否した結果、彼があなたを受けいれず破談になった場合、その破談は、ただちに違法性があるとはいえないように思います。

というのは、行為の態様により、権利侵害におよぶ可能性もあれば、性的な嗜好や、束縛の基準の範疇に止まる可能性もあり、“合うか・合わないか”というレベルの問題だとすれば違法性があるとはいえないからです。

もし、妻の人格を尊重せず所有物のように扱うために結婚をしようとしていたというならば、それは慰謝料の問題になりうると思いますが、そのための立証は、これとこれがあればと簡単にいえるものではないので、そのような深刻な場合には、こういう場ではなくきちんと法律相談を受けられることをお勧めします。

こういった性癖や性格は、お互いよく知らないままに結婚し、入籍してしまった後に問題化して、泥沼の離婚問題になる場合も少なくありません。

慰謝料の有無にかかわらず、何より本当に自分は彼と結婚したいのかどうか、よく考えてみてください。お互いに助け合って生活し、将来子どもが生まれたらお互いに頼れる存在かどうか……そこのポイントをよく考えて、もう一度再考を。一度結婚をすると、離婚は容易ではありませんから、両親とも相談しつつ、自分の幸せな将来のために決断をしてください。

また、破談になった場合に慰謝料請求ができるかという点について別の観点から確認すべきことがあります。別れ話はつねに慰謝料につながるかというと、そうではありません。まず、婚約したかどうかが問題になります。「結婚を前提に」付き合っているというのは、主観の問題かもしれず、慎重にみる必要があります。

両親に挨拶し、親族の葬式に出席するなどをしたとしても、必ずしも婚約したことになるとは限りません。おつきあいの挨拶としか思わなかったと言われればそれまでです。婚約破棄により慰謝料を請求するケースは、婚約していたかどうかが紛争になりがちなので、第三者が見ても、婚約していたであろうと思われる客観的事実が必要です。例えば式場の予約をして前金を入れたとか、結納をしたとか、主観にとどまらない事実を複合的に判断したときに“これはお互いに結婚の約束をしたからこそ”と婚約が認められてはじめて、慰謝料が検討されるのです。

そして、一方的に彼が婚約を破棄したというならば、慰謝料を請求できます。一方的にとは、気が変わったとか、別の女性と交際を始めたなどという場合です。しかし、本件のように、彼の嗜好が受け入れられずあなたが拒否したら、彼が別れ話を持ち出したという場合、彼の一方的なものではなくお互いの適合の問題となる可能性があります。

さて、これらを踏まえて、そもそも婚約が成立しているのかどうか、婚約しているとしても、お互いが相手に合わせられないという理由で別れ話になったのであれば、慰謝料を請求することはできないでしょう。

彼は他人とすれ違いざまに、容姿を侮辱するような言葉を聞こえよがしに言うこともあるそう。

賢人のまとめ

受け入れがたい行為をする人と結婚することについて、一度冷静に考えてみてはいかがでしょうか。一度結婚すると、離婚が容易にできないケースも多々あります。

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賢人プロフィール

法律の賢人柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/