妻に子供ができたという衝撃
そんな貴子さんが、最初に淳史さんとの別れを決意したのは、二人の交際がスタートして2年くらいが経過した頃のことです。
淳史さんと出会った異業種交流会は、出会いの夜からずっと行っていませんでした。しかし、会が非公開で運営するSNSのグループはたまにチェックしていました。
ある日、ふとSNSグループの投稿を見ると、「会の発足メンバーのひとり・淳史さんに、二人目の子供が生まれました。2児の父として、これからますます頑張ってくれるでしょう!」と書いてあったのです。
そこには、生まれたばかりの子供を抱いて幸せそうに微笑む、淳史さんの“父親の顔”があったのです。
貴子さんには「妻とはずっと不仲で離婚もそう遠くない」と、この2年間、ことあるごとにそう言っていました。でも、不仲ではなく、妻との間に子供をもうけていたのです。
確かにこの半年間、貴子さんが、今後のことについて淳史さんと話そうとする度に、話しをはぐらかし、怒鳴り散らした挙句、早めに帰ってしまうことが多くなっていました。
そうなると、貴子さんは「私が何か悪かったのではないか」と自分を責めてしまい、ますます淳史さんが恋しくなるのです。
だからこそ、出産となると、貴子さんも動揺を隠しきれません。
悩んだ貴子さんが、知人の紹介を経て、私のオフィスを訪れたのは、それから数日後でした。
明らかに寝不足の表情と、腫らした瞼が、ここ数日の貴子さんの心労の大きさを物語っています。ひとしきり、これまでの経緯や、自分の甘さを責める言葉、淳史さんへの恨み事を話した貴子さんは、自分はどうするべきなのか。と私に尋ねてきました。
この場合、どうすべきという正解はありません。貴子さんがどうしたいか。重要なことはそちらだからです。それから私はゆっくりと時間をかけて、貴子さんの答えが出るまで話し合いました。
やがて「もう、こんな苦しみからは抜け出したいです。彼とは別れたいです。いえ、もう別れます。そう決心しました」。貴子さんは涙を流しながら、そう答えたのでした。

【なぜ、不倫の関係は、なかなか終わることができないのか……その2に続きます】