人はそう簡単には変わらないのか?
やり直そうと思っても、再び登山中心に。これを繰り返すうちに、桃子さんは「もう私は耐えられないので、キレイに別れさせてほしい」と伝えます。
すると、哲也さんは、またもや泣いて謝罪をしたのです。
「桃子さんを失いたくない。別れたくない」と。桃子さんも「ここまで私を必要としてくれる人はいないかもしれない」と、言って電話を切ったのでした。
そうして、私のオフィスを訪れ、これまでの一連の経緯を話してくれた桃子さんは、私に「このまま別れるべきなのか。それともやり直すことはできるのでしょうか」と聞いてきたのです。
私は「人の気持ちや考え方は、時と場合によって変わっていくもの。だからこそ、二人の未来について断言することはできませんが…」と前置きをしてから、桃子さんにアドバイスをしました。
「哲也さんにとって登山は“人生そのもの”であり、自分の一部…内臓のようなものかもしれません。しかし、桃子さんとのことは “自分とは別の世界”という括りなんだと思います。そして、そういう分別になっている以上、今後も同じことを繰り返すでしょう。
もちろん、それは善悪判断の範疇外にある、哲也さんの性分なのです。それを桃子さんが受け入れるかどうかではないでしょうか」
桃子さんは合点がいったように、聞いてきます。
「つまり、私は今、哲哉さんの人生における“他者”という扱いなのですね。あればあったほうがいいけど、無ければ無くても構わない程度なのでしょうか」
私は「おそらくそうでしょう」と答えました。
「ハイスペックで仕事ができているのに、なぜか結婚しない・できない男性に、哲哉さんのようなタイプは多いです。私が相談を受けた中でも、登山はもとより、鉄道、カヌー、サーフィン、フットサル、クルマ、バイクなどを最優先することに悩む女性は少なくありませんでした。
ただ、“私は彼にとって他者。交際や結婚ができればそれでいい”と割り切って付き合える女性もいます。ただ、そういう男性と結婚し、出産や育児でどれだけ妻が困っていても、趣味を優先することで、離婚を選ぶ人もいます」
私がそう言うと、桃子さんは意を決して、哲也さんとの恋愛関係を解消。哲也さんがゴネるなど、多少の一悶着はありながらも、最後はお互いに納得して友人関係に戻りました。
桃子さんは哲也さんと交際したことで、恋愛経験を積み自信ができたのでしょう。2か月後には別の男性と交際をスタートさせ、今度は結婚に向かい具体的に話が進んでいるそうです。
