自分から別れの言葉を切り出したのに、そのことを後悔している
一方的に甘えられる2ケ月間を過ごし、関係も安定したころ、文隆さんは一切の連絡をしてこなくなります。どうしたんだろうと思って文隆さんの部屋を訪れると、そこには文隆さんと、見知らぬ女性がベッドにいたのです。そこで麻衣さんは即「さようなら」と言ってしまいます。
しかし、その後、文隆さんは一度は追ってきたものの、突然一切の連絡が途絶えました。麻衣さんから連絡してもすべてブロックされてしまったそうです。
そこで、「もう彼は私のことを好きではなくなったのだ」とショックを受け、楽しかった日々を思い出すように。
私のオフィスで「あの電話に出ていれば、話を聞いていれば」と麻衣さんは泣きながら後悔の言葉を並べつつ「もう一度文隆さんとやり直した」いと言います。
そこで、私は「文隆さんは麻衣さんにとって、かけがえのない男性だったのですね」と言います。麻衣さんは「はいそうなんです。だからもう一度やり直したいんです」とすすり泣きをしています。
そして、私はもう一つ質問を投げかけました。
「文隆さんとの交際で、麻衣さんにとって良かったことはありますか?」
すると、麻衣さんの動きが固まり、何とか言葉を絞り出そうとする態度に変わりました。
そして「あります」というので、「具体的には何ですか?」と質問を重ねると、麻衣さんは「あれ…出てこない…かも」と言いつつ、涙は止まっていました。
麻衣さんが復縁にこだわるのには、理由があります。人は誰であれ、過去の自分を正当化したいと思うからです。特に理不尽な目に遭い、納得ができないまま終えてしまった恋愛は特にそうです。「あれはあれで良かったはずだ」と思いたいですし、「良かった」を補強するために、復縁にこだわってしまうのです。
麻衣さんは、すっかり冷静な顔になり、「私は文隆さんが好きだから、文隆さんと復縁したいのではなく、すべてが理不尽だった恋愛をそのままで終わらせたくないからだったんですね」と言いました。
私は「そうなんです。不利益ではなかったと自分に証明したくて、復縁にこだわってしまうのです」と言い切りました。
特に文隆さんのように、カリスマ性があり感情のアップダウンが激しい相手だと、この傾向が強まります。いわゆる共依存と言われる状態になってしまうのです。この場合、理不尽は過去のものとして割り切り、未来に向かうことが大切です。
麻衣さんは「なんだかスッキリしました。こうして冷静に振り返ってみると、文隆さんと結婚してもいい未来はなかったかもしれません」と帰っていきました。
それから1か月ほどして、麻衣さんはテクニカル系のライターをしている同世代の男性との交際をスタート。仕事を通じて知り合い、告白されたそうで、穏やかで楽しい交際が続いているそうです。
それから3か月が経過した今「なんであんなに復縁したいと思っていたのか、自分でもまったくわからない」と苦笑い。
復縁の執着の多くは「過去の自分を正当化したい」という思いから生まれます。そのことを知っておくと、自分の思いの正体がつかめて、どう動くべきか自ずと見えてくるのです。
